仏像を壊さずに木の種類を調べる ―非破壊的な識別法の開発―

タイトル 仏像を壊さずに木の種類を調べる ―非破壊的な識別法の開発―
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 安部  久
能城 修一
渡辺  憲
石川 敦子
岩佐 光晴
和田  浩
金子 啓明
発行年度 2015
要約 仏像などに使われる貴重な木の種類を調べる際に、木材を傷つけることはできません。そこで、近赤外分光法により、針葉樹材と広葉樹材との区別や、カヤ材を非破壊的に見分ける技術を開発しました。
背景・ねらい 古来、木材は日本文化の根本を支えており、国宝など多くの文化財に用いられています。仏像などの文化財を保全・修復する際には、どのような樹種が材料として使われているかを知ることが必要不可欠です。材料の樹種を知ることは、文化財が作られた歴史的・文化的な背景を理解するためにも重要であり、ひいては日本文化を理解する手がかりとなります。文化財の調査は壊さないことが原則であり、木材の樹種を調べる際にも非破壊的方法が求められます。そこで、非破壊方法である近赤外分光法が木材の種類を知るために有効かどうかを検討したところ、近赤外線の波長を変えることによって、針葉樹材と広葉樹材との区別や、カヤ材の判別が可能となりました。
成果の内容・特徴 仏像に多く用いられている木材の種類
わが国で仏像などの木彫像に用いられている樹種はある程度限られていることが分かっています。特に、国宝や重要文化財などに指定されている文化的に価値の高い仏像には、ヒノキ、カヤ、クスノキ、カツラ、ケヤキなど特定の樹種が使われています。

近赤外分光法とは
近赤外線は、可視光線と赤外線の間にある波長の光で、目には見えない光です。この光は、①個々の化学成分によって特定の波長の光が吸収される、②物質の中まで光が届く、③対象物への影響が少ない、④水分を含む物体の中にも光が入りやすい、という特徴があり、血中の酸素濃度の測定、農産物の糖度や酸度の測定、空港でのペットボトルの中身の種類を調べる装置など、我々が日常的に目にする非破壊的な計測装置で広く活用されています。近赤外分光法によって木材の種類を調べる場合には、対象となる木材の近赤外線の吸収スペクトルを測定します(図1)。あらかじめ由来のはっきりした標準試料をいくつか用意しておき、その試料の吸収スペクトルの形から木材の種類を分けることができるかを調べます。

由来のはっきりした木材試料
標準となる由来のはっきりした木材試料として、森林総合研究所の木材標本庫の標本を用いました(図2)。森林総合研究所木材標本庫には、現在、国内外の約8,000 種、28,000 個体の樹木から得られた木材標本が集められています。これは日本では最多の標本数で、現在も国内外の研究機関と連携して、標本の充実を図っています。

近赤外分光法で木材の種類を分ける
比較的短い波長領域の近赤外線の吸収スペクトルを用いて分析した結果、木彫像に多く用いられているカヤ材は、他の樹種との区分が可能であることが分かりました(図3)。一方、長い波長領域を用いた場合には、針葉樹材と広葉樹材とを区別できることが確認できました(図4)。このように、利用する波長によって、分けることができる樹種のグループが異なることが分かりました。現在、さらに精度良く分けることができる波長領域を探索するほか、この結果が、伐採後長い期間を経て表面が光や熱にさらされた文化財にも実際に応用できるかを検証しています。

本研究は、科学研究費補助金「木彫像の樹種識別技術の高度化」(25292109) による成果です。

図表1 236934-1.jpg
図表2 236934-2.jpg
図表3 236934-3.jpg
図表4 236934-4.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p18-19.pdf
カテゴリ

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる