タイトル | 国産広葉樹の利用拡大のポイント-チップ製造現場の調査から- |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
小林 功 藤本 清彦 松村 ゆかり |
発行年度 | 2015 |
要約 | 国産広葉樹チップの利用拡大に役立てるため、国内大手14チップ工場を調査し、実際に取引されている国産チップの品質と、各チップ工場が抱える課題を明らかにしました。 |
背景・ねらい | 森林を温室効果ガスの発生抑制に役立てるには適正な維持・管理が重要で、そのためには「利用→植林→育林」のサイクルを維持することが必要です。国内の森林のうち約4 割を占めるとされる広葉樹は、製紙の原料となる「チップ※」としての利用が中心で、その利用量は多いとはいえません。国内14 の製紙用チップ工場を調査し、製造されているチップの品質と生産体制、原料の丸太の調達及び製紙工場との取引について調査を行い、輸入チップより安い価格で十分な品質のチップが生産されており、原料丸太の安定調達に課題があることを明らかにしました。この成果を活かして適切な対策をとることにより、国産広葉樹チップの利用拡大が促進できます。 ※チップ 木材を小片にしたもの。パルプやパーティクルボードなどの原料になります。 |
成果の内容・特徴 | 国産広葉樹チップの利用を増やすためには何が必要か かつて広葉樹は薪や炭、家具などの日用品の材料として多く使われましたが、現在は製紙の原料となる「チップ」としての利用が中心です。ただし、現在製紙業界で使われている広葉樹チップの約9 割は輸入品です。国産チップの価格は1kg 当たり17 円(2013 年)と、輸入チップの平均価格1kg 当たり22 円に対して優位となっていることから、国産チップが製紙原料に使われない原因は他にあることになります。この理由を解明し、国産広葉樹チップの利用拡大に役立てるため、国内14の大手製紙用チップ工場を対象として、製造しているチップの品質やチップ工場と製紙工場との間のチップの取引に関する実態調査を行いました。 製紙工場が求めるチップの品質基準 各チップ工場が製紙工場と契約しているチップの品質基準について聞き取り調査を行いました(表1)。製紙工場では薬剤でパルプ※を取り出す処理を均質な材料を用いて短時間で行うため、所定の長さより長いチップ(これをスリーバと呼びます)の混入割合を制限しています。また、白い紙製品に汚れが浮き出ては商品価値が下がるので、汚れの元になる樹皮や腐れ、異物などの混入も厳しく制限しています。 製造されているチップの品質 国内のチップ工場はこれら製紙工場が課す厳しい品質基準を満たしているのかどうか、工場で製造されたチップを採取して調べた結果が図1 です。工場ごとに品質基準が少しずつ異なりますが、製紙工場による要求品質を満たしていないチップ工場はありませんでした。 この調査によって、価格だけでなく品質でも国産広葉樹チップは、輸入チップと十分競争できることが明らかになりました。ではなぜ輸入チップに遅れを取っているのでしょうか? 国産広葉樹のチップとしての利用拡大のポイント 国内の原料丸太の産地は海外と比べて個々の生産規模が小さく、また地域によっては樹木の伐採量に大きな季節変動があります。各チップ工場が入手できる原料丸太には限りがあるため、小規模工場が多く、その結果、複数のチップ工場が一つの大規模製紙工場へチップを納品するのが普通です。受け入れや検品、ストックヤードの管理などを考えれば、たとえ少々割高でも一年を通じて大量のチップを安定して入手できる海外チップの方が製紙工場にとって魅力的です。したがって、国産広葉樹チップの利用拡大にはチップ工場の生産能力の増大だけではなく、伐採から集材・搬送に至る原料丸太の供給体制の強化が必要であり、それに付随する多くの課題を一歩ずつ解決していくことが重要です。 ※パルプ 木材から取り出したセルロースを主成分とした繊維の集合体。紙の原料となります。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p20-21.pdf |
カテゴリ | 季節変動 ストック 薬剤 |