| タイトル | 台風でも流れにくい放射性セシウム |
|---|---|
| 担当機関 | (独)森林総合研究所 |
| 研究期間 | |
| 研究担当者 |
篠宮 佳樹 大貫 靖浩 小林 政広 玉井 幸治 坪山 良夫 蛭田 利秀 |
| 発行年度 | 2015 |
| 要約 | 東京電力福島第一原子力発電所事故により森林に降下した放射性セシウムは、台風による大きな増水時でも下流へ流出しにくいことがわかりました。 |
| 背景・ねらい | 我が国の森林の多くは雨の多い気候のもと、急峻な山地にあります。東京電力福島第一原子力発電所(以後、福島第一原発)の事故で放射性セシウムが降下した森林では、台風の時に森林から下流に放射性セシウムが大量に流れ出すのではないか、という心配がありました。そこで私たちは、福島県郡山市の森林に設定した試験地で、2012 年の台風4 号の大雨時に、渓流水の中に流出する放射性セシウムの量を調査しました。増水時のセシウム137 濃度は、流出水量が最大となった時には晴天時の約30 倍に上昇しましたが、増水期間を通じたセシウム137 の総流出量は、試験流域のセシウム137 降下量の0.07%でした。このことから、森林からの( 単位面積あたりの) 放射性セシウム流出率は、台風の様な大雨の時でもわずかであることが分かりました。 |
| 成果の内容・特徴 | 原発事故による放射性セシウムの放出 我が国では水源となる森林の多くは、傾斜が急な山地にあり、台風などの豪雨時には河川が濁流で満たされます。こうしたことから、福島第一原発の事故によって放射性セシウムが降下した森林では、森林に降下した放射性セシウムが台風の時に濁流と共に下流に大量に流れ出すのではないか、という不安がありました。そこで、福島県の森林に試験地を設け、台風が来た時に集中して渓流水を採水し、森林から流出する放射性セシウムの濃度を調べました。 2012 年6 月19 日から20 日にかけて台風4 号が通過した際、総雨量168 ミリ、1 時間当たり最大で34 ミリの大雨が降りました。その総雨量は2012 年で最大でした。雨の降り始めから雨が止んだ後まで1 時間ごとに連続して、その後は少し間隔をあけて合計20 回以上渓流水を採集し、セシウム137 濃度を測定しました。 渓流水中の放射性セシウム濃度の変動 渓流水のセシウム137 濃度と懸濁物質濃度(水の濁り具合の指標)は、流出水量が増えると急激に上昇しました(図1)。1 時間当たりの雨量が最大になった時、流出水量も最大になり、セシウム137 濃度、懸濁物質濃度も最大になりました。このときセシウム137 濃度は、晴天時の濃度の約30 倍になっていました。台風が過ぎ去り雨が止んで、流出水量が減り始めると、セシウム137 濃度と懸濁物質濃度は、一転して急激に低下しました(写真1)。さらに、増水時でも水に溶けた状態(溶存態)のセシウム137 濃度は検出されないか、検出されても極めて低い濃度であることも分かりました。つまり、増水時の渓流水に含まれている放射性セシウムは水の濁り成分に主に由来していたのです。 台風に伴う大雨増水時に流出したセシウムの割合 増水の始まり(19 日15 時)から終わり(20 日17時)までの流出水量とセシウム137 濃度から、セシウム137 流出量を1 時間ごとに積算したところ、台風4号にともなう大雨増水で森林1 平方メートル当たり72ベクレルのセシウム137 が流出したことがわかりました。調査地流域のセシウム137 の降下量は、1 平方メートル当たり約11 万ベクレルと見積もられていますから、この量は調査地に降下したセシウム137 の約0.07% に相当します。1 回の台風で流出したセシウム137 の量は、この地域に降下した量に比べて格段に少なかったのです。 以上のことから、一定の面積あたりで考えた場合、台風による大きな増水であっても森林に降下した放射性セシウムが渓流水を通じて外へ流出する割合は非常にわずかであることがわかりました。 この理由として、森林から流出するセシウム137 はほとんどが懸濁物質に由来すること、我が国の森林では植生が繁茂し、地表が落葉で覆われ、かつ土壌の降雨浸透能が高いので、懸濁物質が発生する要因となる雨滴や地表を流れる水流の影響が弱められ、渓流を通じた懸濁物質の流出が少ないことが考えられます。 本研究は、農林水産省農林水産技術会議委託プロジェクト研究費「森林内の放射性物質に由来する影響を低減させる技術の開発」による成果です。 |
| 図表1 | ![]() |
| 図表2 | ![]() |
| 研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p44-45.pdf |
| カテゴリ |
| 表面熱可塑化による木材の無接着剤熱圧接合 |
| 間伐時の渓流水の濁りの発生と作業道の影響 |
| 落葉広葉樹林における林床面CO<sub>2</sub>放出量の長期連続測定 −川越森林気象試験地− |