タイトル | 大量のおとり丸太でナラ枯れ対策 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
所 雅彦 北島 博 加賀谷 悦子 衣浦 晴生 後藤 秀章 近藤 洋史 齊藤 正一 岡田 充弘 栗生 剛 大谷 栄徳 山中 武彦 吉濱 健 |
発行年度 | 2015 |
要約 | ナラ林を伐採し、丸太を大量に集積しておとりとして、カシノナガキクイムシを誘引する防除法を開発しました。使用した丸太は、使用後チップとして利用して低コスト化につなげ、伐採したナラ林は多様な種からなる広葉樹林に誘導します。 |
背景・ねらい | 日本中に広がるナラ枯れを防除するため、ナラ林の一部を伐採し、被害地周辺に大量集積しておとり丸太とし、原因害虫であるカシノナガキクイムシを誘引する防除法を開発しました。おとり丸太は使用後にチップ化、ペレット化して、燃料用、製紙用として利用することにより、これまでの伐倒駆除経費に対して約90%のコストダウンを達成することができました。さらに伐採後のナラ林は、多様な種からなる広葉樹林に誘導することが可能です。 |
成果の内容・特徴 | ナラ枯れの被害 ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(以後、カシナガ)によって病原菌が媒介される樹木の伝染病で、日本海側を中心に各地のミズナラ・コナラ等に大量の枯損被害をもたらしています。近年はシイ・カシ類の照葉樹林でも被害が広がり、現在までに30 都府県で広葉樹資源に損害を与え続けています。 ナラ枯れを防除する画期的な方法 ナラ枯れ被害の軽減には、林分内のカシナガの数を大幅に減らすことが必要です。そこで、ナラ林を計画的に伐採し、丸太から発散されるカシナガが好む木の匂い(カイロモン)と集合フェロモン剤によって、カシナガを誘引・駆除する大量集積型おとり丸太法を開発しました。 大量集積おとり丸太法 ナラの生立木を春に伐倒し、長さ2m に切った丸太を、ナラ枯れ被害地近くに20m3 程度に山積みにし(図1)、この丸太にカシナガを誘引するための集合フェロモン剤を設置しました。丸太からもカシナガの好む匂い成分(カイロモン)が発生しており、これらが合わさってカシナガを多数誘引することができます。中~激害地では、1m3 あたり15,000 頭ものカシナガを誘引することができました( 図2)。ミズナラの場合、通常カシナガ1,000頭が穿入すると枯れてしまいます。おとり丸太20m3(ナラ約50 本)で30 万頭誘引捕獲したカシナガが、健全なナラに穿孔していたら、300 本のナラが枯れていたことになるため、害虫防除により、300 本の枯死を防いだことになります。 丸太の利活用 カシナガが穿孔したおとり丸太は被害材になってしまいますが、チップやペレットにして燃料用や製紙用原料として利用することができます。チップやペレットからの収入を加えると、20m3 のナラを伐採して大量集積おとり丸太法を行った場合の駆除経費は、従来の方法で300 本を伐り倒して処分した場合の駆除経費の約1 割強でした ( 図3)。ただし、カシナガが穿入した丸太は、翌年のカシナガ成虫の羽化脱出前まで遅くとも5月中にはチップやペレットにする必要があります。 森林再生 伐採しておとり丸太を採取した林の跡地、18 箇所の稚樹調査では、多様な広葉樹の若木が育っており、30cm以上の稚樹が5,000 本/ha 以上で天然更新完了とする山形県の管理基準を満たしていました。この手法で、被害を未然に防ぎ、多様な広葉樹林へと誘導する可能性を示すことができました。 成果の普及 大量集積型おとり丸太法は、防除対策を進める東北6県、群馬県、東京都、静岡県、愛知県で行政、事業担当者、市民等に研修を実施して普及してきました。また、以上の成果をもとに「ナラ枯れ防除の新展開」というマニュアルを作成しました。 本研究は、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「広葉樹資源の有効利用を目指したナラ枯れ低コスト防除技術の開発」による成果です。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p52-53.pdf |
カテゴリ | 病害虫 害虫 コスト 低コスト 低コスト防除技術 フェロモン 防除 |