国産の「カギカズラ」で漢方薬を作る ―組織培養で増やし、枝の薬用成分の濃度を探る―

タイトル 国産の「カギカズラ」で漢方薬を作る ―組織培養で増やし、枝の薬用成分の濃度を探る―
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 谷口  亨
河村 文郎
石井 克明
発行年度 2015
要約 つる性の樹木であるカギカズラは漢方に使用され、高血圧症や認知症の抑制効果があるとされています。これを組織培養で増殖する方法を開発し、また、薬用成分が枝のどこの部分に多く含まれるかを明らかにしました。
背景・ねらい カギカズラは漢方薬の原料として使用されていますが、その全ては中国産です。国内でカギカズラを栽培し、自給率を向上させるためには、薬用成分含有率の高い優良個体の選抜、そのクローン増殖、さらには栽培技術の開発が有効です。本研究では、組織培養によるカギカズラのクローン苗生産方法を開発しました。また、枝の部位による薬用成分の含有率の違いについて解明しました。これらの成果を活用することにより、国産の優良なカギカズラの栽培が可能となり、地域社会の活性化に寄与すると期待できます。
成果の内容・特徴 つる性常緑樹木カギカズラ
カギカズラはつる性の常緑樹木であり、中国南部と日本(房総半島以南~九州)に自生します(図1A)。カギカズラの枝の葉の付け根には釣り針のような形をした鈎(カギ)があり(図1B)、鈎を付けた枝を乾燥させたものは釣藤鈎(チョウトウコウ)と呼ばれる漢方の原料です。釣藤鈎はアルカロイド類のリンコフィリンやヒルスチンを含有し、神経過敏、不眠などの精神神経症状の他に高血圧症や認知症の改善に効果があるとされることから、今後の需要拡大が期待されます。しかし、釣藤鈎の国内流通品の全ては中国産であり、自給率を高めるためには薬用成分含有率の高いカギカズラを選抜し、そのクローン苗を栽培することが有効と考えられます。そこで、本研究ではクローン苗作製のため、カギカズラの組織培養による増殖方法を検討しました。また、薬用成分含有率の高い個体の選抜の基礎情報とするため、枝の部位別の薬用成分含有率の変異を調べました。

カギカズラの組織培養
鈎を付けた枝を栄養分と植物ホルモンを含む培地で人工的に培養すると鈎の先端からシュートが発生しました(図1C)。これを伸長させ(図1D)、発根のための培地に移すと根が出て植物体となります( 図1E)。発根率は約90%と高く、また、図1E の植物体を切り分けて再び発根培地に移すと同様に発根し、1ヶ月での植物体の増殖率を計算すると約7 倍となりました。このようにして組織培養で作製した植物体は、土を入れたポットに移植すると良く成長し、温室で4ヶ月間栽培すると80cm 程度の苗高のクローン苗となります。

薬用成分含有率
日本薬局方には、釣藤鈎の漢方原料の基準として総アルカロイド(リンコフィリン及びヒルスチンの合計)の含有率が0.03%以上であることと規定されています。組織培養で作製し、温室で4 ヶ月間栽培した苗木から鈎を付けた枝を採取し、葉を除去して節毎に切り分け、高速液体クロマトグラフィーでアルカロイドの含有率を分析しました。その結果、リンコフィリンの含有率は、枝の先端部付近で0.12%程度と高く、基部付近でも0.07%程度ありました(図2)。また、ヒルスチンの含有率はリンコフィリンよりも低いですが、リンコフィリンと同様に先端部付近で含有率が高いことを明らかにしました(図2)。

成果の活用
組織培養による増殖技術は、薬用樹木であるカギカズラのクローン増殖に利用できます。また、個体内の薬用成分含有率の変異が明らかになり、測定部位を統一することで含有率の高い個体を正しく効率的に選抜できることがわかりました。本研究成果を活用して、薬用成分含量の高い優良個体を選抜し、それをクローン増殖して栽培することにより、カギカズラ栽培地域の活性化や国産釣藤鈎の供給に役立つことが期待できます。

本研究は、平成26 年度農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「薬用系機能性樹木の生産効率化手法の開発」等による成果です。
図表1 236959-1.jpg
図表2 236959-2.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p68-69.pdf
カテゴリ 乾燥 機能性 クローン苗 栽培技術 需要拡大

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