不耕起水田輪作体系におけるリン酸、カリ減肥下での土壌養分動態と収量性

タイトル 不耕起水田輪作体系におけるリン酸、カリ減肥下での土壌養分動態と収量性
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2008~2013
研究担当者 渡邊和洋
松尾和之
渡邊好昭
松﨑守夫
発行年度 2014
要約 水田輪作体系において,小麦の栽培時に播種前のリン酸施肥量とカリ追肥量を増やすことにより、大豆、水稲を無リン酸、無カリ栽培した場合でも、各作物とも大きな減収は認められず、土壌の可給態リン酸もほとんど減少しないが、交換性カリはやや低下する。
キーワード 減肥体系、リン酸、カリ、不耕起栽培、水田輪作
背景・ねらい 水稲-麦類-大豆の水田輪作において、不耕起播種機を基軸とし、大豆の無施肥および水稲の肥効調節型窒素施用とを組み合わせることで、生産コストを大幅に削減できることを実証した(中央農研センター2011年成果情報)。この施肥体系でも短期的には各作物の収量性は低下しないものの、中長期的には土壌のリン酸とカリの供給力が低下し、収量性に影響を及ぼす危険性がある。そこで、それらの収支バランスを維持することのできる減肥施肥体系の開発することを目的に、大豆の無施肥、水稲の無リン酸,無カリ施用と小麦栽培時のリン酸とカリの増肥を組み合わせ,輪作体系を通して減肥をおこなった場合の収量性および土壌養分動態を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 検討に供した減肥体系のうち、減肥1では大豆栽培時に3要素無施用、水稲栽培時はリン酸、カリ無施用とし、小麦の栽培時に播種前に熔成リン肥を用いたリン酸増肥とカリ追肥を行った。なお2巡目の大麦では、カリは追肥でのみ施用し、リン酸は無施用とした。減肥2では、減肥1の処理に加え、リン酸とカリについては小麦および大麦播種時に基肥施肥量のそれぞれ20%、32%分のみを播種溝に局所施用した。減肥3では減肥2の処理に加え、小麦の播種溝施用後、リン酸とカリについて基肥の30%分を表面施用した。ただし、2巡目では基肥は播種溝施用のみとし、残りの窒素を1月に施用する体系とした(表1)。なお,籾殻以外の作物残渣は全て圃場に還元する。
  2. 設計した減肥体系を4年間継続したところ、全ての作物で慣行施肥体系と同等の収量が得られる(図1)。
  3. 4年間の減肥体系による栽培で、土壌の可給態リン酸(トルオーグ法)は施肥体系の違いで大きな差異を生じず、また低下傾向も認められない(図2)。この結果、輪作体系を通じた総リン酸施肥量を慣行施肥体系の50%程度まで削減できる。
  4. 土壌の交換性カリは、総カリ施用量を30~55%まで削減した減肥体系では、大豆栽培時の低下が大きく、4年間では慣行施肥体系に比べて低下傾向にあるため、土壌分析に基づいて小麦、大麦栽培時のカリ施肥量を増やして、輪作体系全体のカリ減肥率を縮減する必要がある(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果情報における水稲の慣行施肥は、不耕起乾田直播用の標準施肥であり、リン酸およびカリは無施用である。
  2. いずれの作物も汎用型不耕起播種機を用いて播種を行った。なお、小麦については事前に浅耕・鎮圧を、水稲ではレベラ-による均平作業を実施した。
  3. 減肥体系の熔りんは事前の浅耕時に施用し、小麦、大麦の播種溝施用と水稲の肥効調節型肥料は不耕起播種機の播種溝内に施用した。その他は表面施用である。
  4. 本研究に供した圃場は灰色低地土であり、本暗渠を有するほか、小麦作付け前に弾丸暗渠及び額縁明渠を施工した。
図表1 236973-1.jpg
図表2 236973-2.jpg
図表3 236973-3.jpg
図表4 236973-4.jpg
図表5 236973-5.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2014/narc14_s08.html
カテゴリ 肥料 大麦 乾田直播 コスト 小麦 水田 水稲 施肥 大豆 播種 不耕起栽培 輪作 輪作体系

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