出穂期の窒素追肥によりコメのセルロース含有量は低下する

タイトル 出穂期の窒素追肥によりコメのセルロース含有量は低下する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2000~2014
研究担当者 黒田昌治
池永幸子
緑川景子
寺内かえで
星雅子
石丸嘉朗
阿部啓子
朝倉富子
発行年度 2014
要約 出穂期に塩化アンモニウムの追肥を行うと、開花後15日目の登熟途上のコメでは、追肥を行わない場合と比較してセルロース合成に関わる遺伝子群のmRNA発現が低下する。また、収穫後のコメではセルロース含有量が低下する。
キーワード イネ、窒素追肥、マイクロアレイ、セルロース、タンパク質
背景・ねらい 出穂期前後の窒素追肥は、コメの収量を増大させる一方で、タンパク質含有率を高め食味等の品質を低下させることが知られている。しかし、タンパク質以外の成分については、窒素追肥がどのように登熟途上のコメの遺伝子発現を変化させ、その結果としてコメでの含有量を変動させて品質に影響するのか、そのメカニズムの詳細は良く分かっていない。そこで、出穂期の窒素追肥がコメでの遺伝子発現と成分含有量に及ぼす影響をマイクロアレイ法によって解析する。
成果の内容・特徴
  1. 圃場試験において、出穂期に10アールあたり塩化アンモニウム(塩安)8kg(=窒素量2.1kg)を追肥すると、対照区に比較してコメの全アミノ酸含有量が約20%増大する(図1a)。
  2. 人工気象機試験で、分げつを全て切除する条件で同様の追肥を行うと、対照区に比較して追肥区ではコメの窒素含有量が約60%増大する(図1b)。この場合、葉色は追肥区の個体で明らかに濃い(図1c)。
  3. 上記の人工気象機試験で開花後15日目の登熟途上のコメを採取し、そこから得たmRNAを用いてマイクロアレイ解析を行うと、対照区に比較して追肥区ではタンパク質合成に関わる遺伝子群のmRNA発現が上昇する一方で、多糖類合成に関わる遺伝子群のmRNA発現は低下する。特に細胞壁の主要成分の1つであるセルロースの合成に関わる遺伝子群は、多くの遺伝子で発現の低下が認められる。
  4. 圃場試験で収穫した完熟玄米の切片を作製し、calcofluor white処理してセルロースを蛍光染色すると、対照区に比較して追肥区では胚乳部分での蛍光強度が有意に低い(図2)。このことから、追肥区ではコメのセルロース含有量が低下していることが分かる。
  5. 以上の結果をまとめると、コメ1粒のレベルでは、窒素追肥がタンパク質含有量を高める一方でセルロース含有量を低下させており、個別の成分によって含有量増減の反応が異なる(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究では品種「日本晴」を使用し、マイクロアレイ解析にはAffymetrix社のGeneChip Rice Genome Arrayを使用している。遺伝子発現の比較にはRank Products法を用い、false discovery rate (FDR)<0.05の条件で発現に差がある遺伝子を選抜している。
  2. 本研究のマイクロアレイデータは、公共のデータベースGene Expression Omnibus databaseに登録されている。
図表1 236977-1.jpg
図表2 236977-2.jpg
図表3 236977-3.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2014/narc14_s12.html
カテゴリ データベース 品種 良食味

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