DOG1相同遺伝子の発現強化によりコムギ種子休眠性を強めることができる

タイトル DOG1相同遺伝子の発現強化によりコムギ種子休眠性を強めることができる
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所
研究期間 2008~2014
研究担当者 安倍史高
芦川育夫
森正彦
中村信吾
発行年度 2014
要約 コムギにおいて、遺伝子工学的手法を用いてDOG1相同遺伝子の種子胚での発現量を高くすることで種子休眠性を強めて発芽を遅らせることができ、発現量を低くすることで種子休眠性を弱めて発芽を早めることができる。
キーワード コムギ、DOG1遺伝子、遺伝子組換え技術、種子休眠性、穂発芽
背景・ねらい コムギの収穫時期は雨の多い梅雨の季節と重なり、穂発芽による被害がしばしば発生する。このため、コムギの穂発芽耐性を向上させるための技術開発が望まれている。穂発芽耐性には種子休眠性が深く関与しており、シロイヌナズナなどのモデル植物では種子休眠性に関わる遺伝子が多数同定されている。その中の一つDOG1(Delay of Germination 1)遺伝子は、種子休眠性の系統間差異の原因遺伝子として、種子休眠性に関わる遺伝子としては数少ない自然変異から発見された遺伝子である。つまり、DOG1遺伝子は多面的に極端な形質を発現するような突然変異体の原因遺伝子とは異なり、種子休眠性以外の形質への関与が少ない遺伝子であると期待される。このDOG1遺伝子の機能は明らかになっていないが、シロイヌナズナの種子休眠性の強い系統ではその発現量が高く、遺伝子工学的手法によりDOG1遺伝子の発現量を高めることで種子休眠性が強くなり、発芽できる環境においても発芽が遅れることが示されている。そこで、遺伝子工学的手法を用いてコムギのDOG1相同遺伝子の発現量を高くする、または低くすることでコムギの種子休眠性を変えることができるかを明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 穀類においてDOG1相同遺伝子は遺伝子ファミリーを形成し、進化統計的に5つの分岐群に分類される(図1)。
  2. 図1の下線で示した分岐群1~4に属するいくつかのコムギDOG1相同遺伝子については、シロイヌナズナで高発現させることで種子休眠性を強める。その中では、AtDOG1と同一分岐群に属する図1の太字で示したDOG1相同遺伝子(TaDOG1L4)の効果が最も高い。
  3. TaDOG1L4のcDNAをトウモロコシのユビキチンプロモーターに連結したコンストラクトをコムギに形質転換することで、形質転換コムギの種子胚でTaDOG1L4の発現量を高めることができる(図2A)。一方、RNA干渉法により形質転換コムギの種子胚でTaDOG1L4の発現量を低くすることができる(図2B)。
  4. 形質転換コムギと非形質転換体を同時に育成し、開花60日後に採種してすぐに発芽試験を行うと、TaDOG1L4の発現を高めた系統は非形質転換体に比べて種子の発芽が1~3日程度遅れる(図3)。また、TaDOG1L4の発現を低めた系統では、種子の発芽が1日程度早まる(図4)。コムギにおいてDOG1相同遺伝子の発現量を遺伝子工学的に改変することで種子休眠性を制御することができる。
成果の活用面・留意点
  1. 穂発芽耐性を向上させたコムギの作出に利用できる。
図表1 237010-1.jpg
図表2 237010-2.jpg
図表3 237010-3.jpg
図表4 237010-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nics/2014/nics14_s06.html
カテゴリ とうもろこし

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