タイトル |
リンゴのS9-およびS10-RNaseに連鎖したF-box遺伝子群の単離と解析 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
2010~2014 |
研究担当者 |
岡田和馬
森谷茂樹
土師岳
阿部和幸
|
発行年度 |
2014 |
要約 |
リンゴ品種「Spartan」から単離した10個の新規F-box遺伝子(MdFBX21-30)を解析した結果、リンゴには花粉側S遺伝子候補となるF-box遺伝子が少なくとも11タイプ存在する。
|
キーワード |
リンゴ、自家不和合性、花粉側S遺伝子、F-box遺伝子、S-RNase
|
背景・ねらい |
リンゴ(Malus×domestica Borkh.)の自家不和合性は、S遺伝子座に座乗する雌しべ側S遺伝子と花粉側S遺伝子のセットであるSハプロタイプ(S1、S2、S3、...)に制御される。これまでに雌しべ側S遺伝子としてRNA分解酵素をコードするS-RNaseが同定されている。一方、花粉側S遺伝子は長い間不明であったが、近年その候補として複数のF-box遺伝子が単離されている。本研究では、リンゴの自家不和合性の分子機構を解明し、結実管理・育種へ応用するため、花粉側S遺伝子の候補となる新規F-box遺伝子を単離する。
|
成果の内容・特徴 |
- リンゴ品種「Spartan」(S9S10)から単離した10個の新規F-box遺伝子(MdFBX21-30)は、S-RNaseと完全連鎖し、花粉特異的発現およびSハプロタイプ特異的多型を示したことから、花粉側S遺伝子の有力な候補であると考えられる。これまでに同定されたF-box遺伝子と合わせ、リンゴのS9ハプロタイプには14個、S10ハプロタイプには7個のF-box遺伝子が少なくとも存在する。
- MdFBX21-30とこれまでにリンゴの花粉側S遺伝子候補として報告された25個のF-box遺伝子(MdSLF、MdSFBB、MdFBX)の推定アミノ酸配列を用いて系統樹を作成した結果、31個のF-box遺伝子は同一Sハプロタイプ内よりも異なるSハプロタイプ間で推定アミノ酸配列の相同性が高く(89.6%以上)、11タイプ(SFBB1-SFBB11)に分類される(図1)。
|
成果の活用面・留意点 |
- S9-RNaseに完全連鎖するMdFBX21-23、S10-RNaseに完全連鎖するMdFBX24-30を特異的に増幅するプライマーを用いたPCRにより、それぞれS9およびS10ハプロタイプを同定できる。
- S-RNase型の自家不和合性を示すナス科植物では、17タイプのF-box遺伝子のうち少なくとも7タイプが花粉側S遺伝子として機能することが証明されている。この結果に基づいて、ナス科植物では自家不和合性の分子機構として「複数の花粉側S遺伝子が分担して数十種類に及ぶ非自己S-RNaseを認識・分解する」という「協調的非自己認識モデル」が提唱されている。リンゴにおいても花粉側S遺伝子の候補となるF-box遺伝子が少なくとも11タイプ存在していたことから、リンゴの自家不和合性も「協調的非自己認識モデル」で説明できる可能性が高い。したがって、リンゴの花粉側の自家和合性変異体を創出するには、花粉側のS遺伝子数を増大させる変異 (倍数化など) を誘導する手法が有効であると推察される。
|
図表1 |
 |
研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2014/fruit14_s10.html
|
カテゴリ |
育種
収量向上
なす
品種
りんご
|