3つの冠さび病抵抗性遺伝子を持つイタリアンライグラス新品種「那系33号」

タイトル 3つの冠さび病抵抗性遺伝子を持つイタリアンライグラス新品種「那系33号」
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2004~2014
研究担当者 :清 多佳子
荒川明
藤森雅博
内山和宏
水野和彦
上山泰史
早坂邦昭
八重樫朋祥
山岡(大浦)康子
古谷明彦
足立憲隆
眞部幸子
深沢芳隆
合原義人
澤山杏沙
矢萩久嗣
鬼澤直樹
丸山 健
中島広明
本谷 直
発行年度 2014
要約 イタリアンライグラス「那系33号」は収量性と耐倒伏性に優れる品種「はたあおば」に3つの冠さび病抵抗性主働遺伝子を集積した品種である。約7割の個体が冠さび病抵抗性を示し、「はたあおば」より収量はやや劣るが、多くの形質で同等の特性を示す。
キーワード 冠さび病抵抗性、イタリアンライグラス、二倍体、早生、飼料作物育種
背景・ねらい イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)の我が国の全栽培面積、約5万haのうち、約8割が西日本の暖地・温暖地が占めている。ライグラス類では冠さび病は重要病害であり、罹病により収量、品質および家畜の嗜好性が低下する。現在、冠さび病の発生は、西日本の暖地・温暖地において晩秋から春季に見られるが、今後地球温暖化に伴って、地理的および量的拡大が懸念されている。加えて海外ではすでに本病のレース(品種によって病原性が異なる菌系統)の存在が知られているので、我が国においても今後レースの分化が起こる可能性がある。これらの問題に対応するために、複数の抵抗性遺伝子を付与した、高度安定抵抗性品種を育成する。
成果の内容・特徴
  1. イタリアンライグラス「那系33号」は、DNAマーカーを利用し、3つの冠さび病抵 抗性主働遺伝子LmPc2LpPc2LpPc4、を収量性と耐倒伏性に優れる品種「はたあおば」に集積することを目的に育種した二倍体の冠さび病抵抗性品種である。抵抗性遺伝子LmPc2はイタリアンライグラス「はるかぜ」、LpPc2およびLpPc4はペレニアルライグラス「ManhattanIII」および「Sherwood」からそれぞれ同定された。LmPc2LpPc2およびLpPc4は、優性の遺伝子であり、AFLPおよびSSRなどのDNAマーカーを用いた連鎖解析により、それぞれライグラスの第7連鎖群、第5連鎖群、第3連鎖群に位置付けられる。
  2. 圃場検定での冠さび病抵抗性は「やや強」であり、主要な流通品種の「はたあおば」、「いなずま」、「タチワセ」、「ワセユタカ」よりも明らかに強い(表1)。また、幼苗接種検定においても、約7割の個体が抵抗性を示す(図1)。イタリアンライグラスの早生の主要な品種と比べて、最も冠さび病抵抗性を示す。
  3. 育成地における出穂始日は「はたあおば」、「タチワセ」より1日遅く、「いなずま」より1日早く、早生に分類される(表2)。
  4. 耐倒伏性は「はたあおば」と比べてやや劣るが、「いなずま」、「タチワセ」より優れる(表2)。蛍光反応性は「はたあおば」よりやや高いが、その他の特性は、「はたあおば」と同程度である(表2)。
  5. 地域適応性試験において、3場所2カ年平均の1、2番草合計乾物収量は「はたあおば」を100とする指数で94となり、やや低い(表3)。
成果の活用面・留意点
  1. 西南暖地などでの評価を蓄積することで、冠さび病多発地帯での栽培や、将来の温暖化による冠さび病発生の拡大に備えた新たな育種母材としても利用が期待できる。
  2. 晩秋に発生する冠さび病に強いので、多少の早播きには対応可能と考えられるが、いもち病やピシウム病への抵抗性は定かではないので播種適期は今後検討を要する。
図表1 237088-1.jpg
図表2 237088-2.jpg
図表3 237088-3.jpg
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図表8 237088-8.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2014/nilgs14_s01.html
カテゴリ 育種 イタリアンライグラス いもち病 飼料作物 新品種 DNAマーカー 抵抗性 抵抗性遺伝子 抵抗性品種 播種 品種

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