タイトル |
高精度モニタリングを可能とする表面被覆水路の摩耗測定手法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2011~2014 |
研究担当者 |
中嶋勇
渡嘉敷勝
森充広
西原正彦
川上昭彦
川邉翔平
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発行年度 |
2014 |
要約 |
被覆水路の高精度な摩耗測定手法である。摩耗深さを±0.1mm以内の精度で測定でき、繰返し測定の再現性と安定性も高い。1測点当たりの測定時間は約3分と短く、短時間で多くの点を測定することができ、施設管理者等の精緻な監視業務に貢献する。
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キーワード |
農業用水路、無機系表面被覆工法、摩耗、レーザ測定、平均摩耗深さ
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背景・ねらい |
摩耗が進行した開水路表面をセメント系被覆材で覆う無機系表面被覆工( 以下被覆工と呼ぶ)は、開水路の摩耗補修工法として一般的であるが、その摩耗進行を高精度に測定する手法は確立されておらず、摩耗進行特性に関するデータ収集は進んでいない。被覆工の摩耗進行を考慮した新たな被覆水路の耐久性設計手法を確立するためには、実際の被覆水路の摩耗データの収集、分析が必要不可欠である。本研究では、レーザ距離計を用いた被覆工の定量的な摩耗測定手法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 必要機材を図1に示す。測定は2人一組(1人がレーザ距離計の測定を行い、もう1人がパソコンを操作する)で行う。1測点当たりの測定時間は約3分と短く、短時間で多くの測点の測定が可能である。
- 測定する前に、図1に示すような基準点となる2本の標点(ステンレスアンカー)を被覆工に設置する。測定手順は次の通りである。1)「位置決め器具」を用いてレーザ距離計を被覆面にセットする(図2(a))。2)距離計を始動すると、測定ヘッドが自動的に標点間を移動し、0.1mm間隔で被覆面までの距離を測定する(図2(b))。3)測定距離データは自動的にEXCELファイルに記録され、マクロ機能を用いて平均距離が計算される(図2(c))。なお、ある期間に進行した被覆工の平均摩耗深さは(測定時の摩耗面までの平均距離-被覆完了時の摩耗面までの平均距離)から求める。
- 距離計の鉛直方向の据付誤差は、2つの標点を不動点と仮定し補正する。レーザ距離計の走査線が標点中心から水平方向にズレた場合は再計測を行い対応する。これらを行うことで1回あたりの平均摩耗深さの測定精度を測定値±0.1mmに確保できる。
- 農林水産省のストックマネジメント高度化事業により2012年3月に施工を完了した栃木県真岡市の鬼怒川南部幹線水路(連続6スパン、延長72m)にて現地測定を3年間実施した。対象水路は、潅漑期(4~9月)には流速1~2m/秒、ほぼ満流で通水し、非潅漑期には完全に落水する。水路底には土砂等の堆積はほとんど見られない。側壁及び底版の中央に図3に示す位置に標点を設置し測定を行った。その結果、被覆工の年間平均摩耗量は側壁が0.2mm/年、底版が0.09mm/年と現行の基準値0.25mm/年をそれぞれ下回った。また、側壁の摩耗量は底版より大きいことが示された(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:全国の土地改良管理事務所、コンサルタンツ
- 普及予定地域・普及予定箇所:無機系被覆水路・年間数地区
- 現在、4地区の開水路でモニタリングを実施している。全国規模で収集された摩耗進行データは、長寿命化の手引き(案)などの技術基準の見直しに反映されるとともに、新たな被覆材料の開発などの基礎データとして広く活用が期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2014/14_069.html
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カテゴリ |
ストック
モニタリング
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