六フッ化硫黄を用いた中山間地域斜面における地下水の年代推定法

タイトル 六フッ化硫黄を用いた中山間地域斜面における地下水の年代推定法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2013~2014
研究担当者 土原健雄
吉本周平
白旗克志
石田聡
発行年度 2014
要約 大気中で濃度の上昇を続けている六フッ化硫黄を指標として用いて、中山間地域斜面の地下水流動場において、現代から数十年程度の近年の地下水年代を推定する手法である。得られた年代情報に基づいて異なる流動層の地下水の分類が可能である。
キーワード 六フッ化硫黄、中山間地域、地下水、涵養年代、滞留時間
背景・ねらい 地域資源として水循環の一部を構成する地下水を適切に管理・保全するためには、どのような循環速度で地下水が流動しているか、時間情報に基づいた地下水流動メカニズムの理解が必要である。特に、中山間地域に代表される斜面流動場においては、平野部と異なり地下水流動が比較的活発であり、数年から数十年単位の若い地下水の年代推定が必要となる。しかし、これまで年代推定へ活用されてきた放射性同位体トリチウムは、現在では大気中の濃度レベルが低下しており、近年の地下水年代の識別は困難になってきている。ここでは、工業用に用いられる不活性ガスである六フッ化硫黄(SF6)を用いた地下水の年代推定手法を提案し、地すべり地の地下水において有効性を検証する。
成果の内容・特徴
  1. 工業用途で使用され大気中濃度が上昇し続けているSF6は、降水から地下水へ供給されるが、地下水の流動中では反応性が低い不活性ガスである。地下水中のSF6濃度は涵養された当時の大気のSF6濃度を反映しており、指標として適用した地すべり地においては、同じ採取時期であっても地点により地下水中のSF6濃度は異なる(図1)。
  2. 地下水がピストン流により流動すると仮定し、地下水中のSF6濃度を大気中の濃度に換算した値と、大気中のSF6濃度の履歴とが合致する点をその地下水の涵養年代と推定する。対象地においては、涵養年代は1997~2009年、滞留時間は4~16年と推定される。同程度の深さの地下水排除施設(ディープウェル)であっても異なる流動層の地下水を排出していることが確認できる(図3)。
  3. 地下水が流動する過程において、イオン交換による硬度(Ca2+、Mg2+)の減少と地層からの溶出による重炭酸イオン(HCO3)の増加により、古い地下水ほど硬度/重炭酸イオン当量比が低下する。SF6による年代推定結果とこの傾向はおおむね一致しており、推定された年代が妥当であることを示している(図2)。
  4. 比較的浅部の現代から数十年前の涵養年代を対象とした場合にはSF6、さらに深部で古い涵養年代を持つかを判定する場合には放射性同位体トリチウムを指標として用いることが有効であり、両者を組み合わせて用いることで年代情報に基づいて異なる流動層の地下水を分類することが可能である(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 本手法を用いることにより、異なる深度を流動する地下水の時間情報の把握が可能であり、中山間地域斜面における地下水の循環速度の推定、負荷源からの汚染物質の到達予測等への活用が期待できる。
  2. 大気中のSF6の混入を避けるため、地下水を大気に触れさせずに採取する必要がある。また、自然由来としてフッ素を含む鉱物等からのSF6の混入の可能性があるため、対象とする帯水層の地質を事前に把握しておく必要がある。
図表1 237173-1.jpg
図表2 237173-2.jpg
図表3 237173-3.jpg
図表4 237173-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2014/nkk14_s17.html
カテゴリ 中山間地域

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