タイトル |
外来植物ヒメホテイアオイの発見・対策における「田んぼの草花調査」の活用 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2014~2014 |
研究担当者 |
嶺田拓也
竹村武士
重岡 徹
|
発行年度 |
2014 |
要約 |
農業者による「田んぼの草花調査」は、身近な植物資源に対して「気づき・発見」「学習」「理解」「行動」を促し、ヒメホテイアオイといった強害雑草化リスクの高い新たな外来植物の発見・対策にも貢献できる。
|
キーワード |
田んぼの草花調査、外来植物、強害雑草化リスク、ヒメホテイアオイ
|
背景・ねらい |
水田の安定した生産基盤継続の観点から、強害雑草化リスクの高い新たな外来植物の侵入が問題となっており、農業者による外来植物の早期発見と対策が重要である。一方、住民参加型の環境認識ツールとして提案・整備してきた「田んぼの草花調査」(平成20年成果情報)は、これまでガイドブックが10,000部以上配布されるなど、全国各地で採用され、水田周辺の植物資源に関する住民の意識向上に貢献している。そこで「田んぼの草花調査」実施地区の事例をもとに、新たに侵入した外来植物の発見と対策にも本調査手法が活用できることを明らかにする。
|
成果の内容・特徴 |
- ヒメホテイアオイ(Heteranthera reniformis Ruiz et Pavon)(図1)は、北米から中央南米大陸にかけて自生するミズアオイ科の水草で、イタリアでは水田に侵入し水稲減収をもたらすなど、各地に帰化し強害雑草化するリスクが高い。我が国へは静岡県と熊本県の一部を除いて、これまで帰化事例はない。
- 2012年に埼玉県桶川市で環境保全型農業を推進する団体が「田んぼの草花調査」を実施した際に、ガイドブック等に記載されていない未知の草種を発見し、関東地方で初めてヒメホテイアオイが確認される。
- 「田んぼの草花調査」を通じ、専門家の協力を得て不明種がヒメホテイアオイと同定できたことで、農業者の強害雑草化への懸念と対策意識を高め、自主的な調査・学習へとつながる。
- 埼玉県川島町では勉強会をもとに、ヒメホテイアオイの対策が協議され、発生が著しかった水田では徹底した駆除が行われる。また、環境保全型農業を推進する団体が企画する重点的な分布調査が実施され、当該地域における本種の定着状況が明らかになったことで、地元農業者と農協や土地改良区との連携へとつながっている(図2、図3)。
- 「田んぼの草花調査」は、身近な畦畔や水田に見られる草花の調査を通じ植物資源の「気づき・発見」の機会を提供するだけでなく、その生活史や生態への理解を深める「学習」「理解」のステージを経て、貴重種やシンボル種に対する保全行動などへの参加を促す。生産基盤を脅かす外来植物の対策に関しても、その発見に貢献し、勉強会等の開催で理解を深めたのち、積極的な駆除や調査活動をもたらすことが明らかである(図3)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 「田んぼの草花調査」が、全国の「環境保全型農業直接支援対策」実施地区で採用されれば、生産基盤の新たなリスクとなる外来植物の早期発見や駆除活動が促進される。
- 「田んぼの草花調査」で新たな外来植物を発見した際に、正しく同定および助言を加えられる専門機関あるいは有識者との連携を図れるようなシステム構築が課題である。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2014/nkk14_s20.html
|
カテゴリ |
病害虫
雑草
水田
水稲
|