タイトル |
有用脂質含量の高い植物葉部 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2011~2014 |
研究担当者 |
高桑直也
高橋宙之
宮下和夫
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発行年度 |
2014 |
要約 |
ダイコン葉、テンサイ葉などの植物葉部には有用脂質が高濃度含まれるものがあり、グルコシルセラミドおよび酸化安定性に優れるα-リノレン酸の抽出原料としての価値をもつ。
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キーワード |
グルコシルセラミド、α-リノレン酸、野菜類、バイオ燃料
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背景・ねらい |
温室効果ガスおよびエネルギー問題を背景に、草本系バイオマスや農産加工残渣など未利用生物原料を利用した有用資材・素材の生産技術開発が各地域で活発化している。バイオ燃料を含めた有用資材・素材の製造総コストを低減させるためには、副産物収入を考慮した高付加価値物質の同時回収が効果的である。そこで、植物が含む有用脂質に着目して植物葉部や葉物野菜類を中心に、ヒト皮膚保湿成分であるグルコシルセラミド(GlcCer)および必須脂肪酸であるα-リノレン酸(ALA)の含量を調査する。
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成果の内容・特徴 |
- 供試試料にはいずれもGlcCerが存在し(図1)、1g乾物あたり0.4~1.2mgを含む。その値は、市販GlcCerの主要原料である米糠(0.2 mg/g乾物)よりも多い。
- 特にダイコン葉のGlcCer含量(1.2mg/g乾物)は、GlcCer高含有原料であるリンゴ搾汁残渣(0.9mg/g乾物)よりも多い。また、テンサイ葉(ビートトップ)のGlcCer含量(0.5mg/g乾物)は、市販GlcCerの原料であるビートパルプ(0.5mg/g乾物)と同程度である(2004年度北海道農業研究成果情報「農産物およびその加工副産物における機能性脂質セラミドの含量」)。
- 現行のGlcCer製造工程では、植物体中のステロール配糖体(SG)がGlcCerの高純度精製を困難にしており、供試試料にはSGが0.5~0.9 mg/g乾物で含まれる(図1)。ダイコン葉ではGlcCer/SG含量比が2.2(w/w)で、GlcCerに対する不純物SGの割合が調べた葉物野菜の中で最も少ないため、GlcCerの高純度精製が比較的容易な可能性がある。
- ダイコン葉のGlcCerの主要な分子種は、リンゴ搾汁残渣と同一構造で (図2a)、テンサイ葉のGlcCerの主要な分子種は、ビートパルプと同一構造である(図2b)。
- 図3に示す供試試料の中で、テンサイ葉がもっとも高濃度の脂肪酸を含む。特にALAが占める割合は58.8wt%で、代表的なALA高含有食品であるエゴマ油やアマニ油(いずれも約60wt%)と同程度である。
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成果の活用面・留意点 |
- 植物由来セラミドは糖付加型(GlcCer)で、健康食品や化粧品原料に利用されているが、希少成分のため高価である。牛乳にはコリンリン酸、貝類にはアミノエチルホスホン酸付加型のセラミドが含まれるが、やはりいずれも希少成分である。
- エゴマやアマニなど植物の種子に存在するALAは、主として油脂トリグリセリドの構成脂肪酸であるが、植物葉部のALAは、主としてグリセロ糖脂質(図4)の構成脂肪酸であり、種子由来のALAよりも酸化安定性に優れる。ALAは、ヒト体内でドコサヘキサエン酸(DHA)など長鎖多価不飽和のオメガ-3脂肪酸の合成基質となる。
- GlcCerおよびALA結合脂質は水に難溶のため、各種バイオマス原料の糖化後の残渣からも抽出できる。
- 実用化への展開にあたり、正確なコスト試算をするにはパイロットスケールでの精製試験を実施する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2014/harc14_s26.html
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カテゴリ |
あま
えごま
加工
機能性
高付加価値
コスト
だいこん
てんさい
りんご
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