黄変や臭気の原因となるグルコシノレートを含まない品種「だいこん中間母本農5号」

タイトル 黄変や臭気の原因となるグルコシノレートを含まない品種「だいこん中間母本農5号」
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所
研究期間 2005~2011
研究担当者 石田正彦
小原隆由
柿崎智博
畠山勝徳
吉秋斎
小堀純奈
松元哲
野口裕司
坂田好輝
小島昭夫
森光康次郎
発行年度 2015
要約
「だいこん中間母本農5号」は、通常ダイコンに含まれ加工品の黄変や臭気の原因となる4-メチルチオ-3-ブテニルグルコシノレートを含まない。本品種は、本特性を有した品種を育成するための素材として活用できる。
キーワード 大根、成分育種、イソチオシアネート、辛味、着色
背景・ねらい
ダイコン根部に含まれる含硫配糖体グルコシノレート(GSL)の一種である4-メチルチオ-3-ブテニルグルコシノレート(4MTB-GSL)の分解産物4-メチルチオ-3-ブテニル-イソチオシアネートは、たくあん漬を特徴付ける黄色成分や臭気(たくあん臭)に変化する。
この黄変や臭気は自然環境下で制御することは極めて難しい。また、冷凍保存する業務用大根おろしでも黄変や臭気の発生が問題となっている。そこで、黄変や臭気が生じない大根加工品の製造を可能とする4MTB-GSL を含まない品種を育成する。
成果の内容・特徴
  1. 「だいこん中間母本農5号」は、地方品種「西町理想」の中から見いだされた4MTB-GSL含量が極めて少ない個体に由来し、自殖・選抜を5回繰り返した後、系統内個体間で放任受粉による集団採種を行い、4MTB-GSL 欠失性および主要形質を固定させた品種である(図1)。
  2. 「だいこん中間母本農5号」の根部の総GSL 含量は、市販品種の中では比較的低い「耐病総太り」よりも明らかに低い。また、4MTB-GSL は全く含まれず、分解時に黄変や臭気が生じないGSL であるグルコエルシンが主要GSL として含まれる(表1)。
  3. 4MTB-GSL 欠失性の有無に基づく遺伝解析の結果、4MTB-GSL 欠失性は単因子劣性に遺伝すると推定される(データ省略)。
  4. 「だいこん中間母本農5号」は理想系白首大根の特性を示し、根形はややつまる形状を示す。全重、根重、根長、最大部根径は「秋まさり2号」や「西町理想」に比べて何れも小さく、草勢は劣っている。また、す入りや空洞は「耐病総太り」他2品に比べて発生しやすい(図1、表2)。
  5. 本品種を用いて製造したたくあん漬や大根おろしは黄変せず(図2)、臭気が生じない。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:種苗会社、公立研究機関。
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:本品種の利用許諾契約を4件実施。本品種を利用して育成した2品種を品種登録出願中。
  3. その他:
    品種の4MTB-GSL 欠失性は単因子劣性に遺伝するため、本品種と実用品種との交雑後代から4MTB-GSL 欠失個体を確実に選抜することができるが、F1 品種を育成する場合には、両親に本形質を持たせる必要がある。
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カテゴリ 育種 加工 受粉 だいこん 品種

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