微小震動観測記録に基づく農業用ダムの地震波伝播特性の評価

タイトル 微小震動観測記録に基づく農業用ダムの地震波伝播特性の評価
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2014~2015
研究担当者 黒田清一郎
増川晋
田頭秀和
発行年度 2015
要約 農業用フィルダムの地震観測記録について有感地震だけではなく微小な震動に地震波干渉法を適用することにより、ダム供用中に生じる地震波伝播特性の変動を高い頻度で評価でき、地震発生頻度の少ない地域においても信頼性の高い評価が可能となる。
キーワード 農業用フィルダム、地震波伝播、常時微動、微小地震、地震波干渉法
背景・ねらい 農業用ダムの耐震評価や健全性評価において、堤体の振動特性の評価は重要であるが、特に土構造物であるフィルダムの場合にその振動特性は大規模地震による強震動の影響や、貯水位変動に伴う堤体内部の水分分布の変化の影響等によって変化する可能性があり、また長期供用により経年的に変化する可能性もある。よって堤体の振動特性のより正確な実態把握のためには、中長期的な監視に基づく変動特性の実態把握が必要となる。しかし有感地震の発生は地域によっては少ない場合もあり、信頼性、再現性の高い評価のためには、その変動をより高い頻度で評価する技術が必要となる。本研究は地震波干渉法を有感地震だけではなく無感地震や常時微動に伴う微小な震動観測記録にも適用することによって、高い頻度と信頼性で地震波伝播特性を評価する手法を提案する。
成果の内容・特徴
  1. 評価対象である農業用フィルダムが十数m~数十mのスケールの構造物であること、堤体を震動させる要因は主に下方からの地震波の伝播であることを考慮し、逆重畳(デコンボリューション)に基づく地震波干渉法による評価手法を提案する(文献1~3)。
  2. 提案手法を監査廊および法面上に多点配置した地震計の地震観測記録に適用し、堤体基礎部付近から堤頂へと地震波が伝播する過程を定量的に評価した(図1)。監査廊-堤頂間の高低差約50mの間で地震波伝播時間は0.11秒であり、また伝播時間の推移は堤体内での不均一な振動特性分布を反映し、指数型の近似曲線で評価された(文献4)。
  3. 提案手法を湛水試験時の地震観測記録の微小振動区間(コーダ部)に繰り返し適用すると、貯水位変化に伴う地震波伝播特性の変化を追跡できる(図2)。台風通過に伴う貯水位変化が生じたが、それにより伝播時間が遅延する状況も評価できた(文献4)。
  4. 無感地震や非地震時の常時微動等による微小な震動観測記録はノイズ成分を多く含むが、地震波干渉法の適用によってノイズ成分は低減し、堤体内の地震波伝播に寄与する成分が強調されるため、一定の平均化処理をおこなえば有感地震時の観測記録と同様な結果に収束する(図3)。これにより有感地震観測記録のみを対象とした場合よりも、より高い頻度での評価・監視が可能となる。また地震発生頻度が少ない地域でも、限られた期間中により高い信頼性で地震波伝播特性を評価することができる(文献3,5,6)。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:農業用ダムの維持管理や耐震評価に係る行政部局およびコンサルタント
  2. 普及予定地域:国営事業や県営事業で造成された農業用ダム等を想定
  3. その他:過年度普及成果情報「地震観測記録に基づき農業用ファイルダムに地震動が与える影響を監視する技術」では対象外であった無感地震や常時微動についても、上記の手続きによって地震波伝播特性の評価が可能であることを示した。個々のダムサイトでの適用の際には、地震計の性能や実際の振動状況等を考慮し事前検討する必要がある。
図表1 237386-1.jpg
図表2 237386-2.jpg
図表3 237386-3.jpg
図表4 237386-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2015/15_087.html
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