日本の農業における送粉サービスの経済価値評価

タイトル 日本の農業における送粉サービスの経済価値評価
担当機関 (国)農業環境技術研究所
研究期間
研究担当者 小沼明弘
大久保悟
発行年度 2015
要約 花粉を運ぶ昆虫など(送粉者)が日本の農業にもたらしている利益(送粉サービス)の経済価値を推定したところ、2013 年時点で約 4,700 億円(そのうち約 3,300 億円は野生送粉者による)と推定されました。これは日本の耕種農業生産額の約 8%に相当します。
背景・ねらい リンゴなど送粉者がいないと十分な果実をつけない農作物は多くあります。近年、主要な送粉者である野生ハナバチ類の世界的な減少による農業生産への悪影響が懸念され、全球規模での現況評価が行われています。また、一部の国では、送粉サービス維持のための対策が行われています。我が国では、セイヨウミツバチなど飼養昆虫の送粉サービス価値評価はありましたが、野生送粉者も含めた評価はありませんでした。そこで本研究は、日本農業における送粉サービス全体の経済評価を試みました。
成果の内容・特徴 Gallai et al.(2009: Ecol. Econ. 68, 810–821)の試算方法に準拠し、日本の状況に合わせて作物の送粉依存度を修正して送粉サービスの価値評価を行いました。これは、農作物の結果・結実に必要な昆虫による送粉への依存度(0 から 1 の範囲で、例えばイネのように自家受粉する作物の場合は 0)を、農業統計から得られる作目ごとの年間生産額にかけて合計する方法です。その結果、2013年時点の日本における送粉サービスの総額は約 4,700億円でした。これは同年の耕種農業産出額(約 5 兆 7,000 億円)の約 8%を占めました。飼養昆虫のセイヨウミツバチによるサービスの総額は約 1,000 億円(施設栽培 730 億円、露地栽培 273 億円)、マルハナバチによるサービスは 53 億円と推定されたのに対し、野生送粉者による貢献は約 3,300 億円と算出されました(図 1 左)。また、野生送粉者の貢献額が大きいのは、リンゴなどのバラ科の果実類や、メロンなどの果実的野菜類やトマトなどの果菜類でした(図 1 右)。さらに、送粉サービスに対する依存度は都道府県ごとに大きく異なっていました(図 2)。リンゴやオウトウ、ウメといった果樹生産の盛んな青森県、山形県、長野県、和歌山県で依存度が高い傾向にあり、最大で耕種農業産出額の 27%を野生送粉者によるサービスに依存していました。
この研究は、日本の農業が受けている野生送粉者によるサービスを経済評価した初めての研究成果です。ただし、すべての送粉者による貢献額から飼養昆虫の貢献額を差し引くという手法で野生送粉者の価値を評価したため、統計情報では把握できない半飼養昆虫や人工授粉、薬剤処理の効果もその中に含まれています。送粉サービスの維持・増進のためには、野生送粉者の確保に必要な農地周辺環境の整備や、飼養昆虫や人工授粉といった代替手法との効果的な組合せなどを検討することが必要です。

本研究の一部は、JSPS 科研費(25292210)による成果です。
図表1 237422-1.jpg
図表2 237422-2.jpg
研究内容 http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result32/result32_70.pdf
カテゴリ うめ おうとう 施設栽培 受粉 トマト ばら マルハナバチ ミツバチ メロン 薬剤 りんご

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