タイトル | 変わりゆくシロアリ生息地と寒冷地におけるシロアリ対策の必要性 |
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担当機関 | (国)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
大村 和香子 神原 広平 加藤 英雄 |
発行年度 | 2016 |
要約 | シロアリの野外生息と被害情報を精査して生息マップを更新した結果、これまで防蟻処理を必要としなかった寒冷地の木造建築物においても、シロアリ対策が必要であることが明らかになりました。 |
背景・ねらい | シロアリは、熱帯~亜熱帯原産であるにもかかわらず、長い年月を経て徐々に寒冷な気候に適応し、生息域を拡げてきています。今回、日本各地における木造建築物へのシロアリ被害リスクを評価するため、主として 2010 年以降の野外生息域と被害情報を精査して、シロアリの野外生息マップを更新しました。その結果、これまで住宅の土台などで使用する木材に対して防蟻処理が必要とされていなかった北海道や青森県においても、シロアリの野外での生息や住宅等への被害が認められるなど、防蟻処理の必要な地域が変化していることを明らかにしました。これらの成果は、木造建築物に対するシロアリ被害を低減するためのシロアリ予防対策に活用できます。 |
成果の内容・特徴 | シロアリ分布の変遷 木造建築物に多大な被害を与える木材害虫のシロアリは、元来熱帯~亜熱帯原産と考えられています。ところが、長い年月を経て徐々に寒冷な気候に適応するとともに、建築材料として使う木材も餌となることから、私たちの生活圏の拡大にともなって、シロアリも生息域を拡げています。 現在、離島を含む日本国内には23種類のシロアリが生息しています。このうち、木造住宅に対して特に甚大な被害を引き起こすのが、地中や地際の枯死木等の野外に営巣するイエシロアリとヤマトシロアリの2種類で、木造建築物の床下部分から侵入して加害します。特にヤマトシロアリは、北海道の一部や高地を除く日本全国に生息しており、明治時代にはすでに北海道の函館でその生息が報告されていました。 ヤマトシロアリの野外分布北限は2001年の段階では図1のように札幌市付近が北限でしたが、今回、野外生息域と被害情報を改めて精査した結果、図2のように北海道北部(名寄市)まで生息地を拡げている状況を明らかにしました(図3)。 多雪地域でなぜシロアリが生息できるのか? 道内でも積雪量が特に多く、かつ冬期の気温が低い地域として知られるのが、ヤマトシロアリの野外生息北限である北海道名寄市です。なぜ、熱帯育ちで冬期に休眠もしないシロアリが、このような土地で越冬し野外生息できているのでしょうか? シロアリの野外生息が確認されていない北海道東部は冬期、根雪(長期積雪=観測点における積雪が30日以上継続した状態)になる前に気温が氷点下になります。このとき土壌は直接気温の影響を受けるので、深くまで凍結することが報告されています。一方、名寄市が位置する北海道北部の名寄盆地は、冬期の比較的早い時期に根雪となることから、いわゆる「積雪の断熱効果」により土壌の凍結が進みにくいことが知られています。そのため、ヤマトシロアリが生息している、冬期に除雪作業 を実施しないような場所では(図4)、土壌の凍結が生じないことで、ヤマトシロアリの営巣している枯死木等の内部温度が、生息可能な温度に保たれると考えられます。 寒冷地の住宅でもシロアリ対策が必要 今回、土台などの木材に対して防蟻処理が必要とされていなかった北海道や青森県においても、シロアリの野外生息が認められたことから、防蟻処理の必要な地域が拡大していることが明らかになりました。これらの成果は、木造建築物に対するシロアリ被害リスクを低減させるためのシロアリ対策の改善に活用できます。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2016/documents/p24-25.pdf |
カテゴリ | 亜熱帯 害虫 |