タイトル |
二種類のデータが作り出す関数の同一性を第二種の過誤確率によって判断する |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2014~2015 |
研究担当者 |
光永貴之
林武司
長坂幸吉
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発行年度 |
2015 |
要約 |
二種類のデータによって作られる関数の同一性を評価するために、それぞれの関数の切片、係数の差について第二種の過誤確率を用いて判断する。例として、ロジスティック回帰の例について考察する。
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キーワード |
ロジスティック回帰、第二種の過誤、アブラムシ、アブラバチ
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背景・ねらい |
直接観察が不可能な現象のメカニズムを予測するために、観察可能な事象を用いて現象を関数化し、その挙動を比較する事によって評価することを考える。例として、通常の天敵とは異なり、アブラムシの天敵であるアブラバチの場合、寄生されたアブラムシはある程度の産仔をすることが知られており、これは防除に要する時間を引き延ばす可能性があると考えられる。しかし、寄生後産仔数がどのようなメカニズムで決定されるのかについては直接観察をすることができない。そこで、この現象を考察するために、ロジスティック回帰曲線の同一性をパラメーター間の比較をすることによって検討する。
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成果の内容・特徴 |
- アブラムシ類の天敵として知られるアブラバチ類は多くの種が知られており、既寄生モモアカアブラムシ成虫の寄生後産仔数はアブラバチの種によって異なる(表1)。未寄生の場合と比較して、寄生後産仔数はおよそ75~82%程度減少する。しかし、各アブラバチ種がモモアカアブラムシ成虫に寄生した場合の寄生後産仔数を用いて、アブラムシ群集の内的自然増加率を計算すると産仔数の大幅な減少にも関わらず、内的自然増加率の減少程度は20~40%程度である(表1)。このことは、アブラムシの寄生後産仔数がたとえ少数であっても次世代の増殖に寄与することを示す。
- アブラムシの寄生後産仔は寄生したアブラバチ幼虫がアブラムシの生殖器官を破壊することによって終了することが予想されるが、アブラバチは内部寄生蜂であるためこの現象を直接観察することはできない。
- 寄生されたアブラムシ50頭について、寄生されてからの日数を横軸に取り、縦軸に産仔した個体の割合を取るとロジスティック回帰式(A式、省略)で表すことができる。一方、寄生されたアブラムシ成虫を各日別に50頭ずつ解剖することにより、寄生されてからの日数とアブラバチ卵・幼虫期の頻度分布を知ることができる(図1)。
- アブラバチ卵・幼虫期は計5ステージあるので、4つのバイナリーパターンを作ることができる。それぞれのバイナリーパターンで作成されたロジスティック回帰式とA式の間で切片、係数の差を取り、その有意性をt検定で比較すると卵・1齢期とそれ以降の齢期で分割した場合のみ、すべてのアブラバチ種で有意性を検出できなかった(表2)。この時の第2種の過誤確率は最大で0.3%であった。このことから、寄生後産仔数を減少させるには、アブラバチ幼虫の1齢期間が短いことが重要であることがわかる。
- 全く同様の試験についてサンプル数を変えて行う場合、第二種の過誤確率は図2のように変化するので、同一性の評価のためには十分なサンプル数が必要になる。
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成果の活用面・留意点 |
- 今回の解析は有意差がないことが判断基準ではなく、第2種の過誤確率が十分小さいことが判断基準となるので、類似の解析の際には十分なサンプル数が必要である。
- アブラバチ幼虫の1齢期間が短いほど寄生後産仔数を減少させるので、この形質は天敵選抜の際に重要なポイントとなる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2015/narc15_s33.html
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カテゴリ |
病害虫
防除
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