トマトのうま味成分グアニル酸が加熱調理で増加

タイトル トマトのうま味成分グアニル酸が加熱調理で増加
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所
研究期間 2011~2015
研究担当者 安藤聡
堀江秀樹
発行年度 2015
要約 トマトの加熱調理によって、うま味成分であるグアニル酸が増加する。オーブン加熱の場合、加熱前(10 mg)の約1.8倍となる。グアニル酸増加の最適温度は、50~60℃である。
キーワード トマト、グアニル酸、うま味の相乗効果、加熱調理
背景・ねらい グアニル酸やイノシン酸等の呈味性ヌクレオチドは、少量でグルタミン酸のうま味を増強する。これらのヌクレオチドは野菜類には含まれないとされてきたが、近年、我々はトマトやナスには他の野菜と比較してグアニル酸が多く含まれることを明らかにした。本研究は、グルタミン酸を多く含むことが知られているトマトについて、グアニル酸含量の品種間差と加熱調理がグアニル酸含量の増減に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 全ての品種において、生果実には6mg/kg以上(平均10mg)のグアニル酸が含有される(図1)。果実をオーブン加熱(250℃、15分)すると、グアニル酸が有意に増加する。加熱によるグアニル酸の増加率は新鮮重換算で16~93%である(図1)が、加熱時には水分蒸発に伴う濃縮が起こるため、実質的には35~139%に達する(平均1.8倍)。加熱後のグアニル酸含量は、農研機構育成品種である調理用トマト「なつのこま」や「にたきこま」において最も高くなる傾向にあるが、加熱によるグアニル酸増加は生食用品種でも観察される。
  2. 氷温下でミキサー破砕した果実を、25~100℃で加温すると、グアニル酸とその分解物であるグアノシン(うま味増強効果は無い)は、70℃までは経時的に増加するが、80℃以上では増加しない(図2)。果実破砕液中では、酵素的な反応によってグアニル酸の生成とグアノシンへの分解が同時に進行し、50~60℃で生成分解の差が最大となると考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. ニンジンジュースを用いたモデル系では、10mg/lのグアニル酸添加による味の変化を官能評価で十分識別可能であることから、トマトに含まれるグアニル酸は呈味性に影響すると考えられる。
  2. トマトのうま味を増強する調理・加熱条件の策定に活用できる。
  3. トマト調理・加工品の品質評価において、グアニル酸含量が指標として活用できる。
  4. オーブン加熱過程の果実内部では、70℃以下の温度経過時にグアニル酸が増加するものと考えられる。
  5. グアニル酸は内在性のリボヌクレアーゼによるRNAの分解によって生成し、グアニル酸はフォスファターゼによる脱リン酸化を経てグアノシンへと変換されると考えられる。トマト果実中の両酵素は、活性の最適温度が50~60℃と高く、70℃中でも活性を維持している可能性がある。
図表1 237672-1.gif
図表2 237672-2.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2015/vegetea15_s24.html
カテゴリ 加工 トマト なす にんじん 品種

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