タイの肉牛生産における集約化が温室効果ガス排出量等の環境に及ぼす影響

タイトル タイの肉牛生産における集約化が温室効果ガス排出量等の環境に及ぼす影響
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2011~2015
研究担当者 荻野暁史
三森眞琴
山下恭広
田中康男
Kritapon Sommart
Sayan Subepang
林恵介
発行年度 2015
要約 タイの肉牛生産における集約化は、現状の放牧を主体とした粗放的生産と比較して、出荷体重1kgあたりの温室効果ガス排出量を削減するが、エネルギー消費および酸性化への影響を増加させる。
キーワード 肉牛生産、集約化、タイ、LCA、温室効果ガス、環境影響評価
背景・ねらい タイではこれまで、放牧を主体とし、資材・労力の投入を低く抑える粗放的な肉牛生産が主流であった。しかし、牛肉需要の拡大、特に高品質の牛肉需要の拡大に伴い、近年、高栄養の飼料を給与し牛舎において飼養する集約的な肉牛生産が増加してきている。生産体系の変化は、資材投入量の増加、生産性の向上等を通して肉牛生産からの温室効果ガス (GHG)排出量等の環境影響も変化させ得ると考えられるが、その影響はまだ明らかにはされていない。一方、現在では世界のGHGの半分以上が新興国・発展途上国から排出されているなど環境影響が大きくなっていることから、それらの国々においても環境影響の低減が必要になりつつある。ここでは、タイにおける粗放的(「粗放」)および集約的(「集約」)肉牛生産システムのライフサイクルアセスメント (LCA)を行い、環境影響を比較する (図1)。
成果の内容・特徴
  1. 「粗放」および「集約」のCO2換算(CO2e)のGHG排出量は、出荷牛生体重1kgあたりそれぞれ、14.0および10.6 kgである (図2a)。「集約」は購入飼料由来のGHG排出量が増加するが、出荷月齢が早まることで特に消化管メタン排出量が減少し、出荷体重の増加と合わせ、全体のGHG排出量は「粗放」と比較して24%削減される。
  2. 「粗放」および「集約」のエネルギー消費量は、出荷牛生体重1kgあたりそれぞれ、3.5および11.3MJである (図2b)。「粗放」は資材・燃料等の投入量が極めて小さいため、生産性が低くてもエネルギー消費量が小さい。一方「集約」では、エネルギー消費量の大部分が購入飼料によるものである。
  3. 「粗放」および「集約」のSO2換算 (SO2e)の酸性化への影響は、出荷牛生体重1kgあたりそれぞれ、47.4および61.8gである(図2c)。いずれにおいてもふん尿由来のアンモニアが主要な負荷物質であり、「集約」においては購入飼料由来の負荷も一定の割合を占める。
成果の活用面・留意点
  1. 評価の対象範囲は、飼料やその他資材の生産からと畜用に肉牛を出荷する段階までである。評価項目は、GHG排出量 (CO2、CH4、N2O)、エネルギー消費、酸性化である。環境影響評価に必要なデータは、現地の農家に聞き取り調査を行うことにより取得し、環境負荷係数等についてはIPCCガイドライン等の文献値を用いている。「集約」における購入飼料の主要な原料は、キャッサバ、パーム核油かす、米ぬか、大豆粕、糖蜜である。
  2. 肉牛生産における環境と調和した生産性の向上を図るにあたり有用な情報となる。
  3. 各肉牛生産システムの特徴、用いた環境負荷発生係数等、詳細については発表論文を参照されたい。
図表1 237704-1.gif
図表2 237704-2.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2015/nilgs15_s27.html
カテゴリ 出荷調整 大豆粕 肉牛

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