薬剤耐性遺伝子のコピー数増加がサルモネラの耐性を増強する

タイトル 薬剤耐性遺伝子のコピー数増加がサルモネラの耐性を増強する
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2013~2015
研究担当者 秋庭正人
李謙一
楠本正博
関塚剛史
黒田誠
内田郁夫
岩田剛敏
田中聖
玉村雪乃
岡本晋
稲岡隆史
矢部希見子
発行年度 2015
要約 最小発育阻止濃度より高い濃度の抗菌剤で選択した耐性増強株では薬剤耐性遺伝子のコピー数の増加が観察される。薬剤耐性遺伝子のコピー数増加がサルモネラの耐性を増強する。
キーワード サルモネラ、GI-VII-6、コピー数増加、blaCMY-2遺伝子、挿入配列
背景・ねらい 2000年代半ばから国内牛群で優勢となっているSalmonella Typhimurium(ST)VII型菌の一部が染色体上に保有するGI-VII-6(GI)は、薬剤耐性関連遺伝子の集積した領域である(2011年度研究成果情報)。全長125 kbのGIは11の薬剤耐性関連遺伝子を含み(図1)、人の重症感染症治療に用いられる広域スペクトラムセファロスポリン(ESC)耐性を規定する。本研究ではESC存在下でのSTの環境適応に果たすGIの役割を明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. GIを保有するL-3553株の完全長ゲノム塩基配列を決定すると、ESC耐性を規定するblaCMY-2遺伝子がGIの中にだけ存在することが明らかとなる。
  2. ESCの1つであるセフォタキシム(CTX)に対するL-3553株の最小発育阻止濃度(MIC)は8mg/Lである。12.5及び25 mg/Lの濃度のCTXを含む寒天平板培地上でL-3553株を培養すると、それぞれ10-6及び10-8の頻度で耐性の増強した株を取得できる(図2)。50 mg/L以上の濃度では耐性増強株を選択できない。
  3. 定量的リアルタイムPCRで耐性増強株のblaCMY-2コピー数を測定すると、1細胞あたり最大85.3までのコピー数の増加が確認できる(図2)。
  4. 耐性増強株をCTX不含液体培地で継代培養すると、速やかなblaCMY-2コピー数の減少が確認できる(図3)。
  5. 耐性増強株の全ゲノム塩基配列解析により、コピー数の増加がGI全長で起こる場合と、一部で起こる場合のあることが分かる(データ未掲載)。
  6. いずれの場合もコピー数が増加した領域の両端には挿入配列(IS)が存在しており、GIの一部のコピー数が増加する株では、ISに伴われた薬剤耐性遺伝子領域の他の部位への転移が先立つ(データ未掲載)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究で明らかにしたL-3553株の完全長ゲノム塩基配列は、ST VII型菌のゲノム情報として初めての報告であり、新しいST VII型菌検出法の開発などに利用できる。
  2. コピー数の増加した株はMICより少し高い濃度のESC存在下で選択される。動物用医薬品としても広く使用されるESCは血中濃度が高くなる用法・容量で使用されないため、生体内でコピー数の増加した株を選択しやすい抗菌剤であることに留意し、慎重使用を徹底する必要がある。
図表1 237741-1.gif
図表2 237741-2.gif
図表3 237741-3.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2015/niah15_s16.html
カテゴリ 薬剤耐性

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