正常プリオン蛋白質と近接し存在する分子の新規同定

タイトル 正常プリオン蛋白質と近接し存在する分子の新規同定
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2011~2015
研究担当者 岩丸祥史
木谷裕
岡田洋之
竹之内敬人
清水善久
今村守一
村山裕一
Edward A Hoover
横山隆
発行年度 2015
要約 正常プリオン蛋白質と共局在する分子として、微小管調節蛋白質SCG10を新規に同定した。プリオン感染細胞を用いた解析では、SCG10は異常プリオン蛋白質生成に関与しなかったが、プリオン感染マウス脳を用いた解析では、SCG10は有意に減少していた。
キーワード プリオン蛋白質、微小管、SCG10、N2a細胞
背景・ねらい プリオン病では、神経細胞に発現する正常プリオン蛋白質(PrPC)が、異常プリオン蛋白質(PrPSc)へ変換され蓄積し、神経細胞変性が生じることが病因と考えられている。PrPCの立体構造変換の詳細な機構は未解明であるが、細胞膜上に存在するコレステロールに富むナノドメイン"脂質ラフト"とそこに局在する分子群が関与することが指摘されている。これらの分子群の同定は、有効な治療法のないプリオン病の治療薬開発の手がかりとなる可能性がある。今回、PrPC立体構造変換に関与する分子群の同定のため、脂質ラフト上でPrPCと近接し存在(共局在)する分子群の検索を、EMARS(enzyme-mediated activation of radical sources)反応を用いて行う。
成果の内容・特徴
  1. 細胞膜上の脂質ラフトに存在する正常プリオン蛋白質(PrPC)を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が結合した抗PrPC抗体で標識する。ショ糖密度勾配遠心法により、脂質ラフトに相当する界面活性剤不溶膜画分(DRM)を分取し、標識されたPrPCの半径約300 nmの範囲に存在する分子をビオチン標識する(EMARS反応、図1)。液体クロマトグラフィー質量分析法にて、ビオチン標識された分子群を同定する。
  2. その結果、神経特異的に発現し、微小管の脱重合を促進する蛋白質SCG10を同定し、SCG10はPrPCと共局在する(図2)。
  3. プリオン持続感染N2a細胞において、RNA干渉によりSCG10の遺伝子発現抑制を行い、SCG10量を減少させたが、異常プリオン蛋白質(PrPSc)生成に影響を及ぼさない(図3)。
  4. また、プリオン感染150日後の病末期マウス海馬において、SCG10の発現は有意に減少する(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. EMARS法とショ糖密度勾配遠心法を組み合わせた検索方法により、PrPCと共局在する分子として、微小管調節蛋白質SCG10を新規に同定した。プリオン感染細胞を用いた解析では、SCG10はPrPCの立体構造変換に関与していなかったが、今後HRP標識プローブを最適化することで、PrPCの立体構造変換に関与する分子群を同定できる可能性がある。また、脂質ラフトの存在する分子は、病原体の侵入の際に受容体・共受容体として、放出の際には放出補助因子として働くと考えられるので他の病原体にも応用可能であり、感染症の発症機構解析や治療薬開発に新しい視点を提供する可能性がある。
  2. また、今後プリオン感染マウス海馬におけるSCG10発現減少と神経変性の因果関係を明らかにする必要がある。
図表1 237745-1.gif
図表2 237745-2.gif
図表3 237745-3.gif
図表4 237745-4.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2015/niah15_s12.html
カテゴリ 治療法 わさび

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