日本に初めて侵入したH5N8亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス

タイトル 日本に初めて侵入したH5N8亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2014~2015
研究担当者 金平克史
内田裕子
竹前喜洋
彦野弘一
常國良太
西藤岳彦
発行年度 2015
要約 2014年以降世界中に拡散したH5N8亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの国内分離株の性状を明らかにした。過去に日本に侵入したH5N1亜型ウイルスとはニワトリに対する病原性や血清学的性質が異なる。
キーワード 高病原性鳥インフルエンザウイルス、H5N8亜型、ニワトリ、アヒル
背景・ねらい 2014年4月熊本県の肉用鶏農場において高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生があり、我が国では初めてH5N8亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)が分離された。熊本県での発生の原因となったHPAIV株(Kum14と略す)のウイルスゲノムがどのような遺伝的由来をもつのかを明らかにするために、全ウイルスゲノム配列を決定し、海外で分離されたウイルスのゲノム配列との比較を行う。また、Kum14の家きんに対する病原性及び血清学的性状を解析し、これまで国内で発生を起こしたウイルスとの比較により、今後、近縁のウイルスが我が国に侵入した際に、防疫対策上注意するべき点を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. Kum14は東アジア地域で野鳥から分離された鳥インフルエンザウイルスと、同じ地域の家きんでHPAIを起こしたウイルスとの二つの異なる由来の遺伝子をもつ遺伝子再集合ウイルスである(図1)。本ウイルスは同時期に韓国で発生したHPAIの原因ウイルスと近縁である。また、2014年秋以降、ヨーロッパや北米、日本で分離されたH5N8亜型HPAIVとも遺伝子的に近縁である。
  2. Kum14は、過去に国内で分離されたHPAIVに比べてニワトリを感染させるのにより多くのウイルス量を必要とする(表1)。一方、Kum14に感染したニワトリはウイルスを排泄し、100%死亡する。ニワトリが本ウイルスに感染してから、死亡するまでの時間は、過去に日本で分離されたHPAIVよりも長い。
  3. アヒルはニワトリを感染させるウイルス量よりも少量のウイルスで、本ウイルスに感染する(表1)。感染したアヒルはほぼ全ての個体が無症状であり、過去の日本分離株同様、本ウイルスのアヒルに対する病原性は、ニワトリに対する病原性よりも低い。
  4. Kum14と過去に分離されたH5亜型HPAIVの間の血清学的交差性は低い(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. Kum14と遺伝的な類似性の高いウイルスは、2014年秋にはヨーロッパや北米へも侵入し、アジア、ヨーロッパ、北米の各国でのHPAI発生を引き起している。世界的流行に関連のあるウイルスの性状解析を早期に行う事は、その後の流行要因の理解や防疫対策の一助となる。
  2. Kum14に近縁なHPAIVに感染したニワトリは、従来よりも死亡まで時間が長い上に、死亡までの間にウイルスを排泄することから、ウイルスまん延の要因となる可能性がある。発生の早期発見のため、農場における死亡鶏数のモニタリングと迅速な報告が肝要である。
  3. Kum14の血清学的特性から、本ウイルスに近縁のHA遺伝子をもつウイルスは、過去に分離されたウイルスに対し血清学的交差性が低いことが示唆される。抗血清パネルを整備し、近縁ウイルスの再侵入の際の詳細な血清学的性状解析に備える必要がある。
図表1 237748-1.gif
図表2 237748-2.gif
図表3 237748-3.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2015/niah15_s09.html
カテゴリ アヒル モニタリング

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