タイトル |
帰還困難区域内のため池の放射性セシウム濃度の変動傾向 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2013~2015 |
研究担当者 |
人見忠良
申文浩
濵田康治
久保田富次郎
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発行年度 |
2015 |
要約 |
帰還困難区域に立地し、集水域が林地で構成されるため池の、モニタリングによる放射性セシウム濃度の変動傾向である。強雨時を除いて流出水の放射性セシウム濃度は0.1~5.5Bq/kgであり夏季に高く、また、水位低下時に一時的に上昇する。
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キーワード |
東京電力福島第一原子力発電所事故、放射性物質、農業用水、谷型ため池
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背景・ねらい |
東京電力福島第一原子力発電所事故により放出され福島県を中心に沈着した放射性物質は営農再開に向けた懸念要因となっており、物質が蓄積しやすいため池における放射性物質の動態を把握することは、ため池を水源とする農業用水の安全性を検討する上で重要な課題である。ここでは、ため池の水管理や降雨が放射性セシウムの動態に及ぼす影響を把握するため、モニタリングによりため池の流入水、流出水および貯留水を対象に放射性セシウム濃度(134Cs+137Cs)の時間変化を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- モニタリングは帰還困難区域である福島県相馬郡飯舘村内の阿武隈高地に立地する水面積が0.373ha、貯水量が7,500m3の集水域が林地で構成される谷型ため池を対象とする。調査年は2013~2014年、調査地点はため池への流入地点である渓流Aと渓流B、ため池からの流出地点である斜樋と流出管と洪水吐、およびため池の貯留水である(図1)。水質測定項目は濁度と放射性セシウム濃度である。
- 強雨時を除いて流入水および流出水の放射性セシウム濃度は6月~9月では0.3~2.4Bq/kg(平均:1.1Bq/kg)および0.6~5.5Bq/kg(平均:1.9Bq/kg)であり、10月以降では0.3~0.9Bq/kg(平均:0.6Bq/kg)および0.1~2.0Bq/kg(平均:0.6Bq/kg)と低下する(図2)。6月~9月では流出水の放射性セシウム濃度は流入水より全体的に高い。
- 9月中旬に流出管と斜樋の放射性セシウム濃度が一時的に上昇する(図2)。これは、放流のため水位が低下する際に、堆積した底質が再移動することが要因と推察できる。
- 6~12月の溶存態放射性セシウム濃度は、流入水では0.02~0.07Bq/kg、流出水では0.02~0.11Bq/kgである。全放射性セシウムに対する溶存態画分の割合は、流入水では1~9%程度、流出水では1~5%程度である。
- 渓流Bにおける濁度と137Cs濃度の間に正の相関が確認できる(図3)。降雨出水時に渓流水の濁度および放射性セシウム濃度が高まる。
- ため池貯留水の放射性セシウム濃度の鉛直分布は、下層ほど高い傾向を示す。また、水の鉛直混合が促進される循環期(11/26)では、放射性セシウムの上下層間の濃度差が減少する(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 放射性物質が沈着しているため池の施設管理者の取水操作に対する留意事項として活用できる。
- 条件の異なるため池で放射性セシウムの動態を把握するには、別途モニタリングを実施することが望ましい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2015/nkk15_s14.html
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カテゴリ |
水管理
モニタリング
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