タイトル |
水路トンネル覆工の変状発生に及ぼす背面空洞の影響 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
森充広
中嶋勇
川上昭彦
川邉翔平
渡嘉敷勝
西原正彦
|
発行年度 |
2015 |
要約 |
水路トンネル覆工背面に空洞が存在する場合、上方からの荷重増加に伴って、空洞の規模と位置に応じた特異な破壊形態が生じる。空洞の範囲が大きくなると、覆工アーチ部に縦断ひび割れが発生し、天端覆工が上側に変形して破壊に至る現象が見られる。
|
キーワード |
水路トンネル、覆工コンクリート、ひび割れ、空洞
|
背景・ねらい |
全国に2,000km以上ある農業用水路トンネルの大半は、鋼製支保工と覆工コンクリートとの組み合わせで地山からの外力に抵抗する「矢板工法」で建設されている。この工法は、水路トンネル全周が地山と密着することを設計の前提としている。しかし、矢板工法で建設されたトンネルの多くでは、当時の裏込め注入の施工技術の限界などが原因で、空洞が存在する場合があると報告されている。本研究では、この空洞が、水路トンネルの構造的な安全性に与える影響を模型実験により解明する。
|
成果の内容・特徴 |
- 水路トンネルの主な変状は、側壁やアーチ部の覆工のひび割れである(図1)。このような変状が発生している区間の天端覆工背面には、空洞が存在することが多い。
- 水路トンネル覆工を模擬した内空120mm、厚さ10mm、奥行き150mmの円形モルタルを中心に配置し、その周辺に軟岩相当の地山を想定した模擬地盤を打設した供試体(幅600mm×高さ600mm×奥行き150mm)を作製し、この供試体の上部から等分布の荷重を作用させる(図2)。空洞分布を「なし」、「45°」、「90°」に設定した3種類の実験を比較すると、空洞がない場合の最大荷重が342kNであったのに対し、空洞が45°の場合は301kN、90°の場合は251kNとなり、空洞が大きいほど最大荷重が小さくなる。また、空洞が90°の場合には、最大荷重に明瞭なピーク値が現れず、一定荷重で変形が進行し、最終的には、覆工の両側に縦断方向のひび割れが発生し、覆工天端部分が上に跳ね上がるように破壊する(図3上)。
- 載荷中の覆工内空断面の変化は、空洞分布の相違によらず、最初は鉛直方向に縮み、水平方向に広がる。しかし、空洞が90°の場合、最大荷重に至る前にその挙動が逆転し、鉛直方向に広がり、水平方向に縮むように変形する(図3下)。その結果、覆工側壁の内側および天端覆工の外側にひび割れが発生し、破壊に至る。
- 覆工周辺の模擬地盤表面にランダムな模様を配置し、載荷試験前後で撮影したデジタル画像から変形方向や変形量を求めるデジタル画像相関法を適用し、模型実験中の模擬地盤の挙動を観測すると、空洞が90°の場合、載荷212kNの荷重により発生した空洞端部を起点とするひび割れ(図4の赤色のひび割れ)に伴い、模擬地盤の一部が水路トンネル覆工を内側に押し込むように変形する。その結果、地盤からの反力が得られない覆工天端部分が上向きに変形して曲げ破壊する(図4)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、水路トンネルの上部から等分布荷重が作用することを想定して行ったものである。現実の水路トンネルでは、荷重条件や地盤の拘束条件が本実験条件とは異なることに留意する。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
図表4 |
 |
図表5 |
 |
研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2015/post_103.html
|
カテゴリ |
|