複合脂質によるカロテノイドの腸管吸収調節機構の解明

タイトル 複合脂質によるカロテノイドの腸管吸収調節機構の解明
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2011~2015
研究担当者 小竹英一
発行年度 2015
要約 食品中の脂溶性機能成分には腸管吸収性が低いものが多いが、ヒト腸管モデル細胞系で吸収促進素材として複合脂質を見出している。複合脂質は細胞間の接着性に影響を与えてカロテノイドの吸収を促進する。
キーワード Caco-2、カロテノイド、混合ミセル、腸管吸収、複合脂質
背景・ねらい 野菜・果物中の代表的な脂溶性機能性成分であるカロテノイドは腸管吸収性が低い。消化の過程でカロテノイドは、胆汁酸、モノアシルグリセロール、脂肪酸、リン脂質、コレステロールから成る混合ミセル(図1)となり腸管細胞による吸収が可能となる。これまでリゾリン脂質やリゾ糖脂質などの複合脂質(図2)が混合ミセル中に存在すると吸収が促進されることを見出している。本研究では、カロテノイドの腸管吸収における複合脂質による促進作用機序を示す。
成果の内容・特徴
  1. 脂溶性成分は細胞膜(脂質二重膜)を通して吸収されるため、吸収促進メカニズム候補として腸管細胞の細胞膜透過性上昇が考えられている。実際、細胞膜モデルのリポソームを用いた研究ではリゾリン脂質が膜透過性を高める。しかし、リゾ糖脂質を用いて検討すると、カロテノイド吸収量と膜透過性に関係性は認められない。
  2. 次に細胞間結合に着目すると細胞間の無い浮遊状態では吸収促進効果は認められない。細胞間接着の発達に伴い(図3、1日→5日)、対照混合ミセル(複合脂質不含有)からの吸収量が大きく減少するが、リゾ脂質含有ミセルからの吸収量は対照ほど減少せず、これらの吸収促進効果が現れる。すなわち、細胞膜ではなく細胞間結合が吸収促進メカニズムに関与している。
  3. さらに、細胞基底側への輸送(分泌)も促進する。ただし、細胞膜の電気抵抗低下が認められず、基底側まで一貫して細胞間を経由するルートでの輸送ではない。リゾ脂質の促進効果はコレステロールの添加で抑制される。このことから、リゾ脂質は細胞内(間)コレステロールを減らして細胞間透過性を高めて一旦細胞内にカロテノイドを取り込んだ後、基底側に分泌されるが(図4)、この分泌過程での促進も認められる。
成果の活用面・留意点
  1. 複合脂質による吸収促進機構はカロテノイド以外の脂溶性栄養・機能性成分(ビタミンD、E、K等)にも適用できる可能性が考えられる。
  2. 本研究で明らかにした吸収機構は食品機能成分の他に、医薬品の腸管吸収促進経路の検討に際しても有益な情報を与えると期待される。
  3. グリセロ糖脂質は葉菜等を通じて日常的に摂取されているが、食品素材としては利用されていない。脂質には摂取カロリー増加の懸念が持たれるが、リゾグリセロ糖脂質そのものは吸収されない可能性が報告されており、低カロリーで腸管吸収性を高める新素材としての高度利用が期待できる。
  4. 機能性成分の含有量を高めた品種の開発だけではなく、吸収促進成分の含有量を同時に高める品種改良の可能性を示唆する。
図表1 237778-1.gif
図表2 237778-2.gif
図表3 237778-3.gif
図表4 237778-4.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2015/nfri15_s13.html
カテゴリ 機能性成分 品種 品種改良 輸送

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