タイトル |
安定同位体比分析による乾シイタケの原産地判別 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 |
研究期間 |
2012~2015 |
研究担当者 |
鈴木彌生子
田淵諒子
作野えみ
時本景亮
中下留美子
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発行年度 |
2015 |
要約 |
原木栽培および菌床栽培の乾シイタケについて、国産と中国産の炭素・窒素同位体比を比較し、栽培方法および産地による特徴的な分布から、国産と中国産の乾シイタケの産地が判別できる。
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キーワード |
産地判別、安定同位体比、乾シイタケ、原木栽培、菌床栽培
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背景・ねらい |
乾シイタケには、原料・原産地及び栽培方法の表示が義務付けられている。乾シイタケの日本国内における生産量は、2013年度は3,499 tであるが、海外からの乾シイタケの輸入量は5,467 tで、そのすべてが中国からの輸入であり、乾シイタケの国内流通量の60%以上が中国産となっている。2002年に発生した中国産野菜の残留農薬問題などの影響により、国産シイタケの需要が高まっている。中国産乾シイタケは国産の1/3から1/4の価格であるため、安価な輸入物を国産として販売する産地偽装事案の発生が懸念される。乾シイタケの炭素・窒素同位体比は、栄養源となる原木や培地の炭素・窒素同位体比を主に反映するとともに、気温などの生育環境の影響を受ける。本研究では、炭素・窒素同位体比分析を用いて、栽培方法(「原木」または「菌床」)ごとに乾シイタケの産地判別を可能にする分析技術を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 乾シイタケについて、同一個体内の菌傘部と菌柄部の炭素・窒素同位体比を比較すると、菌傘部と菌柄部で違いが見られるが、国産・中国産ともに地域差の方が大きいため、産地判別においては、主食部である菌傘部を用いて検証する。
- 栽培年の相違による乾シイタケの炭素・窒素同位体比の変動を検証するため、2008年から2013年までの6年間に国内の同じ実験圃場で栽培した乾シイタケの炭素・窒素同位体比を比較すると、年次間差よりも地域差の方が大きい。
- 2008年から2010年に収集した原木栽培乾シイタケの炭素・窒素同位体比は、国産(n=95)は、-25.1±0.8‰、-0.7±1.2‰、中国産(n=66)は、-23.6±0.7‰、-3.2±1.8‰である(図1a)。国産の炭素同位体比は、中国産よりも有意に低く(p<0.001)、国産の窒素同位体比は、中国産よりも有意に高い(p<0.001)。
- 2008年から2010年に収集した菌床栽培乾シイタケの炭素・窒素同位体比は、国産(n=50)は、-23.8±0.7‰、+2.9±0.9‰、中国産(n=114)は、-24.6±0.8‰、+0.4±1.4‰である(図1b)。国産の炭素・窒素同位体比は、中国産よりも有意に高い(p<0.001)。
- 栽培方法によって炭素・窒素同位体比の挙動が異なることから、栽培方法別に、国産と中国産乾シイタケについて、炭素・窒素同位体比を用いて判別分析を行うことにより、原木栽培乾シイタケの判別率は、国産87.4%(83検体/95検体)、中国産87.9%(58検体/66検体) (図2a)、菌床栽培乾シイタケの判別率は、国産90.0%(45検体/50検体)、中国産93.9%(107検体/114検体)である(図2b)。以上より、炭素・窒素同位体比分析を用いることで、国産および中国産の乾シイタケの産地が判別できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 引き続き、年次変化を調査する必要がある。
- 軽元素の安定同位体比に加え、ストロンチウムの安定同位体比や微量無機元素組成などの他の技術と統合することで、さらに判別率を向上させる必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2015/nfri15_s03.html
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カテゴリ |
病害虫
しいたけ
農薬
分析技術
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