浅漬け原料白菜および白菜漬けに混入した大腸菌O157の挙動

タイトル 浅漬け原料白菜および白菜漬けに混入した大腸菌O157の挙動
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2012~2015
研究担当者 稲津康弘
発行年度 2015
要約 白菜に付着させた大腸菌O157は、通常の殺菌方法では2桁以下しか菌数が低下せず、白菜漬けに混入させた同菌は10℃、7日間の保存後、ほとんど生き残っている。また白菜漬けに混入させた大腸菌O157は、人工胃液中で1桁しか菌数が低下しない。
キーワード 大腸菌O157、殺菌、浅漬け、食中毒
背景・ねらい 2012年8月に白菜浅漬けを原因食材とする集団食中毒事件が発生した。その後の調査によって、その原因は特定されなかったが、原料白菜の殺菌工程に不備があったことが指摘された。白菜漬けは一般に原料白菜を洗浄、殺菌した後に塩漬けし、これを調味液とともに小分け包装したものが出荷される。購入された白菜漬けは通常、出荷後1週間程度のうちに喫食される。本研究では「原料白菜に大腸菌O157 が付着していた場合、殺菌処理によってどの程度まで菌数が低下するのか」、「白菜漬け製品に大腸菌O157が混入した場合、喫食の時点でどの程度、菌が残っているのか」および「大腸菌O157が混入している白菜漬けを喫食した場合、胃の中で同菌はどの程度死滅するのか」という点につき、定量的な検討を行うことを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 100mg/L次亜塩素酸ナトリウム溶液で10分間処理した場合、白菜に付着した大腸菌O157数は1~2桁程度低下する(図1)。一方、4.7 mg/Lのオゾン水を使用した場合は、水洗と同程度の菌数の低下しか得られない。
  2. 国内各地で製造された25種類の白菜漬けに混入させた大腸菌O157の菌数は、10℃、7日間保存の前後で、ほとんど変化しない(図2)。この結果は、日持ち向上剤の使用の有無や初発pHの違いによらず同様である。日持ち向上剤は、乳酸菌の過剰増殖などによる、商品品質の劣化を防止するためのものと考える方がよい。
  3. 大腸菌O157を50 gの白菜漬けに混入させ、300mLの人工胃液(pH 1.2, NaCl 0.2%)と混合した後に37℃で2時間保温すると、菌数が初発から1桁程度低下する。
成果の活用面・留意点
  1. 厚生労働省の調査(2002~2015年)によれば、漬物原料野菜2186検体から腸管出血性大腸菌およびサルモネラは検出されておらず、国内の漬物原料野菜の腸管系食中毒原因細菌混入率は、極めて低いものと推定される。
  2. 厚生労働省「漬物の衛生規範」(2013年改正)に準拠した次亜塩素酸ナトリウムを使用した殺菌条件では、白菜表面に付着させた大腸菌O157は1~2桁低下する。これは(弱)酸性電解水などを使用したものを含む、多くの先行研究の結果と一致する。人工胃液を用いた試験より、喫食後の胃酸による大幅な生菌数の低下も期待できないと考えうる。
  3. 原料野菜の表面殺菌プロセスは定義上、HACCPプランの重要管理点になりうるが、そこの重点的な管理のみによる食中毒リスクの低減には限界がある。農業生産工程管理(GAP)の遵守等を通じた原料野菜生産段階における一般衛生管理の実施と、加工工程における一般衛生管理の徹底によって、作業者および作業環境から食品への食中毒菌の混入を防止することが必要である。
図表1 237789-1.gif
図表2 237789-2.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2015/nfri15_s02.html
カテゴリ 加工 出荷調整

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