卵嚢と人工卵嚢がケンサキイカの産卵誘発と産卵場所選択に及ぼす影響

タイトル 卵嚢と人工卵嚢がケンサキイカの産卵誘発と産卵場所選択に及ぼす影響
担当機関 佐賀県玄海水産振興センター
研究期間 2012~2016
研究担当者 豊福太樹
北野載
発行年度 2016
要約 卵嚢と人工卵、懸濁卵の存在下でケンサキイカを飼育し、その産卵誘発効果を検証した。また産卵場所選択に及ぼす卵嚢の影響を異なる基質粒径下で評価した。結果、卵嚢と人工卵でのみ産卵が誘発されたため、この誘発効果は視覚的影響と推測された。また本種は基質粒径に因らず卵嚢設置場所に産卵する傾向が強かった。本結果は卵嚢の存在が産卵誘発と産卵場所選択の一要因となる事を示唆するものである。
背景・ねらい ケンサキイカは西日本において非常に重要な漁獲対象種のひとつである(Jereb and Roper 2010)。しかしながら、本種の漁獲量は近年減少傾向にあり(依田・福若2012)適切な資源予測が求められている。そのためには、本種の天然海域での産卵生態に関する基礎生物学的知見の蓄積が不可欠となるが、本種におけるそれらの知見は乏しい。本研究では、異なる卵嚢の存在下でケンサキイカを水槽内飼育することで、産卵行動に及ぼす卵嚢の影響を明らかにし、本種の産卵行動特性に関する知見を得ることを目的としている。 
成果の内容・特徴 2t円形水槽を用いて、ケンサキイカの卵嚢と懸濁卵嚢、人工卵嚢(1.1%カラギーナン)の存在下で、本種を個別飼育し、卵嚢による産卵誘発効果を検証した。試験は収容個体が斃死するまで行い、試験回数は卵嚢区と懸濁卵嚢区、人工卵嚢区で15 回、対照区で14 回行った。卵嚢区と人工卵嚢区では、短期間に産卵行動が誘発されたうえ(表1、図1)、卵嚢設置場所に隣接して産卵する場合が多く見られた(図2、図3)。その一方で、懸濁卵嚢区、対照区ではそのような誘発効果は得られなかった。このことから、卵嚢の産卵誘発効果は視覚または触覚的な影響に因るものと推測された。また卵嚢の存在が本種の産卵場所選択に及ぼす影響を明らかにするために、江口・金丸(2013)が報告した、本種の産卵基質選択性が高かった細かい粒径0.04~1.00 mmの基質(細砂基質)と、選択性が低かった粗い粒径1.26~3.12 mmの基質上に卵嚢を設置したもの(粗砂卵嚢基質)を50t水槽内に設置した環境下で、複数個体の飼育実験を行った。これにより、産卵場所選択に与える基質粒径と卵嚢間での優位性を評価した。その結果、本種は基質粒径の違いによらず、卵嚢設置地点に産卵する傾向が強いことが示された(表2)。本結果は広域回遊性の本種において、既にある卵塊が他個体の産卵場所選択のための重要な目印となることで、局所的な産卵場形成を可能にし、その後の孵化稚仔の生残戦略に貢献しているものと考えられた。 
成果の活用面・留意点 過去にケンサキイカの産卵施設の造成がブロック、ロープ等の設置によって試みられたが、産卵施設への産卵は確認されていない。本研究の人工卵嚢周辺部に卵塊が形成されたことは、人工卵嚢がケンサキイカの産卵施設として活用可能であることを示唆している。 
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=6195&YEAR=2016
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