高張力鋼線電気柵はシカの牧草食害を長期に防ぎ、経済性も良い

タイトル 高張力鋼線電気柵はシカの牧草食害を長期に防ぎ、経済性も良い
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター
研究期間 2007~2016
研究担当者 竹内正彦
塚田英晴
石川圭介
喜田環樹
清水矩宏
福江佑子
南正人
中村義男
花房泰子
深澤充
須山哲夫
発行年度 2016
要約 シカの牧草食害防止に適した電気柵の種別、設置・管理労力を実地検証した。耐久性と経済性において高張力鋼線柵が優れ、高さは140cm以上を確保することで飛び越えを防止し、45cm高の張出し線で接触させ柵の効果を高めることができる。
キーワード ニホンジカ、牧草地、電気柵、畜産
背景・ねらい ニホンジカ(以下,シカ)は2010年度以降の鳥獣種別被害額で最悪の数値を出し続け、主な被害作物である牧草の生産を脅かしている。電気柵による牧草地の防護は有効性が知られているものの、調査期間が複数年に及ぶ報告は極めて少ないため、効果の持続性を議論するには至っていない。そこで、シカによる食害が発生する牧草地において、複数種の電気柵資材を複数年にわたって設置し、電気柵への接触・侵入行動、損壊状況、防護効果の持続性ならびに資材の耐久性について解析する。さらに、防護柵導入コストおよび設置・保守作業労力を実地検証し、牧草地において電気柵を適切に利用できる技術情報を整備する。
成果の内容・特徴
  1. 群馬県西部山間部、長野県境に立地する神津牧場を調査地とし、牧草地へのシカ侵入防止効果を4種類の電気柵(ポリワイヤ4段(以下、PW4)、同5段(PW5)、高張力鋼線7段(FW7)、電網)で実証試験している(図1)。
  2. センサーカメラの撮影結果を用い、牧草地へのシカ侵入日数の割合を対照区(柵無設置)と比較した結果、4種類の電気柵はいずれも有意な侵入防止効果を示す。
  3. シカによる侵入(脱出)は105cm高のPW5柵では跳び越えがあったが、165cm高のFW7柵ではくぐり抜けだけであり、電牧線への接触はPW5では70cm高、FW7では45cm高の張出し線に多い(表1)。シカに対する牧草地用電気柵は最上段を140cm以上の高さとすることが既存の成果から推奨され、本結果もこれを裏付けるデータである。
  4. 侵入脱出時の電牧線への接触負荷でPW4柵、PW5柵の支柱は1年以内に損壊するが、FW7柵と電網柵は4年にわたり効果が持続する。
  5. 推奨耐用年数をもとに電気柵の1年あたりの費用単価を計算すると、FW7柵<PW4柵≒PW5柵<電網柵の順となり、耐用年数が15年のFW7柵が最も安価となる(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. 普及に向け、ポリワイヤと高張力線柵について、高さ条件を合わせた追加実証が必要である。また、高張力鋼線柵(FW7)では上部の張出し線の省略や上部架線への不通電の可否、使用資材の変更、管理の省力化などでコストカットが考えられる。
  2. 本研究では目安としての導入時のコストを算出しており、現在も電牧器のバッテリーや電牧線クリップなど消耗品および電網や高張力鋼線柵の防草シートの耐久性など総合的コストについて15年間の実証をめどに検証中である。
  3. 初期投資額の大きいFW7のような恒久電気柵の導入を促進するにあたっては、生産者の経営計画との適合性を図り、国、自治体等による補助金、制度の活用などについて助言指導できるアドバイザーが介在するとよい。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/carc/2016/carc16_s11.html
カテゴリ くり 経営管理 コスト シカ 省力化 防護柵

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