多様なアジアナシ遺伝資源からみたニホンナシ育成品種の遺伝的多様性と分類

タイトル 多様なアジアナシ遺伝資源からみたニホンナシ育成品種の遺伝的多様性と分類
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門
研究期間 2011~2016
研究担当者 西尾聡悟
山本俊哉
髙田教臣
齋藤寿広
池谷祐幸
発行年度 2016
要約 ニホンナシ育成品種の遺伝的多様性は、育成年代とともに減少している。20世紀後半以降のニホンナシ育成品種は、イワテヤマナシやチュウゴクナシ品種と明確に異なる遺伝的構造を持つ。21世紀に育成された品種の中では「王秋」のみが遺伝的に離れている。
キーワード ニホンナシ、遺伝的構造、主座標分析、ヘテロ接合度、対立遺伝子
背景・ねらい 農研機構のニホンナシの交雑育種事業は1935年より開始されており、果実品質の改善や病害抵抗性の付与等を目標として継続されてきた。交雑育種事業初期から、肉質の改善のために、「二十世紀」を中心とした在来品種が育種親として使われており、その後は「二十世紀」の近縁品種が繰り返し育種親として使われてきた。その結果「幸水」、「豊水」、「あきづき」等の品質の優良な品種が育成されてきたが、育成品種の近交係数は上昇し続けてきた。近年では近交弱勢により樹勢の低下等の問題が生じているため、育種計画において多様な遺伝資源を導入することが検討されている。そこで本研究では、ニホンナシ育成品種と農研機構で保有する多様な遺伝資源の遺伝的多様性をDNAマーカーにより比較し、育成品種における遺伝的多様性の消失程度を把握するとともに、育成品種と遺伝的に離れた遺伝資源を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 20世紀前半の育成品種(FH)、20世紀後半の育成品種(LH)、21世紀以降の育成品種(MOD)からなる3グループは、イワテヤマナシ(IWA)、チュウゴクナシ品種2グループ(USS、BRE)および関東地方(KAN)、日本海側(NSJ)、西日本(WJ)の在来品種からなる3グループと比較して、遺伝的多様性の指標を示す対立遺伝子の豊富さが低い。また、育成品種3グループ(FH、LH、MOD)の中では、育種が進むに連れて対立遺伝子の豊富さが減少している(表1)。
  2. 各グループ間の遺伝的関係を、DNAマーカーを用いた主座標分析からみると、イワテヤマナシ(IWA)とチュウゴクナシ品種(USS、BRE)は、20世紀後半以降の育成品種(LH、MOD)とは明確に異なる遺伝的構造を持ち、育成品種と遺伝的に離れた遺伝資源に位置づけられる(図1)。20世紀後半以降の育成品種(LH、MOD)は育成年代が進むに連れて「二十世紀」に近い位置に分布することから、「二十世紀」由来の遺伝子の集積が示唆される。
  3. 品質の優れる21世紀に育成された品種(MOD)の中では、チュウゴクナシ品種「慈梨」を祖先に持つ「王秋」のみが遺伝的に離れている(図1)。
成果の活用面・留意点
  1. 主座標分析による品種の分類は、ニホンナシ育種において近交弱勢の回避を考慮した交配親の選択に利用できる。育成品種と遠縁であるチュウゴクナシを祖先に持つ「王秋」およびイワテヤマナシやチュウゴクナシ品種を交配に利用することで、遺伝的多様性を増加させることが期待できる。
  2. 多様なアジアナシ遺伝資源の遺伝的類縁関係に関する基礎的な知見を得ることができ、試験研究において適切な材料を選択できる。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2016/nifts16_s08.html
カテゴリ 育種 遺伝資源 DNAマーカー 日本なし 病害抵抗性 品種

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