タイトル |
いもち病菌がイネに感染する仕組みを解明 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 |
研究期間 |
2011~2016 |
研究担当者 |
西澤洋子
南栄一
川原善浩
西村岳志
望月進
南尚子
藤澤由紀子
安藤杉尋
吉田悠理
岡田憲典
松村英生
寺内良平
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発行年度 |
2016 |
要約 |
イネいもち病菌は感染初期にRBF1(アールビーエフワン)と名付けた遺伝子を活性化させる。RBF1から作られるRbf1タンパク質はイネの細胞内にBIC(ビック)と呼ばれる特殊な構造体を作りイネの防御反応を抑制する。RBF1を欠失させた菌は感染できない。
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キーワード |
イネいもち病菌、エフェクタータンパク質、BIC、イネ科作物、蛍光イメージング
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背景・ねらい |
イネいもち病菌は糸状菌(カビ)の一種で、世界各地で稲作に深刻な被害をもたらす。海外では小麦での被害も急速に広まっている。しかしながら、その感染メカニズムについては未だに不明な点が多い。本研究では、イネといもち病菌間の相互作用の解明を目指し、その可視化技術を開発すると共に、ゲノム情報基盤を利用して感染時に特異的に活性化するいもち病菌の遺伝子を同定し、その機能を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 開発した蛍光イメージング手法によって、感染初期の菌糸の挙動やイネの細胞内構造の変化、遺伝子発現やタンパク質の局在部位の変動など、イネといもち病菌の相互作用をリアルタイムに可視化することができる。
- 図1に示すように、RBF1遺伝子をもたないいもち病菌の変異株はイネに感染できない。従って、RBF1はイネへの感染で重要な役割を担う遺伝子である。
- RBF1遺伝子はいもち病菌を生きている植物に接種した時にのみ活性化される(図2)。長時間リアルタイム蛍光イメージング結果は、菌糸がイネ細胞に侵入する度にRBF1遺伝子が活性化されることを示す。
- RBF1遺伝子が破壊されたいもち病菌では、イネの防御反応を抑制すると考えられているエフェクタータンパク質群のイネへの移行レベルが低下し、図3に示すように、イネの抗菌物質(ジテルペノイド系ファイトアレキシン)の生合成が亢進する。
- RBF1遺伝子から作られるRbf1タンパク質は菌から分泌後、侵入菌糸脇に形成されるBICと呼ばれる突起状の構造体に蓄積する。図4に示すように、RBF1遺伝子をもたないいもち病菌の変異株はイネの細胞中にBICを正しく作ることができない。従って、Rbf1はBICの形成に必須のタンパク質である。
- 以上をまとめると、いもち病菌は感染時にRbf1タンパク質を分泌し、イネの細胞内でBICを形成することによってイネの防御反応を抑制して感染するという仕組みをもつ。
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成果の活用面・留意点 |
- RBF1遺伝子の働きを阻害する物質が見つかれば、従来とは作用機作の異なるいもち病防除方法の開発につながることが期待される。
- RBF1遺伝子はコムギに深刻な被害をもたらすいもち病菌など、イネ以外に感染するいもち病菌にも存在するため、その働きを阻害する技術は、汎用的ないもち病防除方法の開発につながると期待される。
- 本研究で作出された、細胞内小器官が蛍光標識された各種形質転換イネやいもち病菌の実験系統は、研究目的に分譲可能である。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2016/nias16_s05.html
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カテゴリ |
病害虫
いもち病
小麦
防除
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