スギ材の放射性セシウム濃度を葉から推定する

タイトル スギ材の放射性セシウム濃度を葉から推定する
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 長倉 淳子
安部 久
高野 勉
高橋 正通
張 春花
発行年度 2017
要約 スギ材への放射性セシウムの蓄積しやすさを、葉の安定同位体セシウム含有量から推定できる可能性のあることが分かりました。
背景・ねらい 東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を受けた森林において、木材中の放射性セシウム濃度を予測するため、スギを対象に葉と材の安定同位体セシウム(133Cs)の含有量を調べました。その結果、スギは 辺材よりも心材に133Csが蓄積しやすく、また、旧葉の133Cs含有量が多いほど心材および辺材の133Cs含有量も多いことが分かりました。これにより、根から吸収された放射性セシウムのスギ材への蓄積しやすさ を、葉の133Cs含有量から推定できる可能性を示しました。
成果の内容・特徴 木材の放射能汚染と土壌の放射性セシウムの上昇
東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、事故)で放出された放射性物質は、周辺の森林における林業や木材利用にも影響を与えています。事故後の調査から、放射性セシウムが検出されたスギ材では、その濃度が周囲の放射性物質の沈着量を反映していることが分かってきました。 事故直後、森林に飛来した放射性セシウムの多くは樹木や落葉に蓄積していましたが、現在では土壌の表層部分に多く蓄積しています。土壌の表層には樹木の細根が多く分布するため、今後、細根を経由して樹体に放射性セシウムが吸収される可能性があります。

放射性セシウムと安定同位体セシウム
放射性セシウムと安定同位体セシウム樹木は根だけでなく葉や樹皮からも養分などの無機物質を吸収します。事故当時、樹木は葉や樹皮からも放射性セシウムを吸収したといわれています。そのため、現在の樹体の放射性セシウム濃度は、根からの吸収のほかに、葉や樹皮からの吸収の影響も受けています。一方、自然界にはもともと、放射性セシウムと環境中での動きが似ているものの放射性を持たない安定同位体のセシウム(133Cs)が存在しています。樹木は事故前から土壌中の133Csを吸収し、樹体内に蓄えてきました。そのため、樹体の133Csの分布は、今後根から吸収される放射性セシウムが、樹体内でどのように分布するかを知る上で貴重な手がかりになります。

根から材へのセシウムの取り込みを葉のセシウム含有量から推定する
有量から推定する木材の分析用サンプルを採るには材を傷つけなければなりませんが、もし材以外の部位、たとえば葉の133Cs含有量から材の133Cs含有量が分かれば、より簡便な方法で 推定ができます。 そこで、福島県の4つのスギ林(川内、上川内、大玉、只見)で、それぞれサイズの異なる3本のスギを選んで葉と材を採取し、133Cs含有量を測りました。その結果、スギは旧葉より当年葉に、辺材より心材に、また大きい個体ほど、133Csの含有量が多いらしいことが分かりました(図1)。また、旧葉の133Cs含有量と心材および辺材の133Cs含有量との間には比例関係が見られました(図2)。 この結果は、葉の133Cs含有量を測ることにより、木材への放射性セシウムの蓄積しやすさを推定できる可能性を示しています。

研究資金と課題
本研究は、JSPS科研費(JP26511010)「スギ材の放射性セシウム吸収リスクの判定」、および林野庁受託事業 「森林内における放射性物質実態把握事業」の成果です。

研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2017/documents/p10-11.pdf
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