加工しやすく衝撃に強い木材・プラスチック複合材をつくる

タイトル 加工しやすく衝撃に強い木材・プラスチック複合材をつくる
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 小林 正彦
片岡 厚
久保 智史
発行年度 2017
要約 エクステリア資材として実用化されている木材・プラスチック複合材(混練型WPC)の力学物性を向上させ、「硬くて脆い」という欠点を改善するために、原料の木粉を化学改質し、「しなやかで強い」WPCを開発しました。
背景・ねらい 木粉とプラスチックを加熱・混練して製造する木材・プラスチック複合材(混練型WPC)は、プラスチッ クよりも曲げ強度に優れ、木材よりも耐水性・耐朽性に優れることから、主にエクステリア資材として実 用化されていますが、硬くて脆いという欠点を持っています。本研究では、化学的に改質した木粉を用いることで、これらの欠点を改善し、耐衝撃性能と伸び性能に優れたWPCを製造することができました。 この成果により、今後、WPCの自由な加工が可能になり、様々な形状の建材、日用品、家電製品、自動車部品などへWPCの用途を拡大できると考えています。
成果の内容・特徴 WPCの欠点を改善するために
木材・プラスチック複合材(Wood Plastic Composites:混練型WPC)は、木粉とポリプロピレンなどの熱可塑性プラスチックを加熱しながら混ぜ合わせ成形・製造する新しい木質系材料です。間伐材、林地残材などの未利用木材やプラスチック廃棄物を原料にできることから、環境適合型の新材料として注目されています。WPCは、プラスチックよりも曲げ強度に優れ、木材よりも耐水性・ 耐朽性に優れるため、主にデッキ材などのエクステリア資材として利用されています。しかしその一方で、衝撃強度や伸び性能が低く、硬くて脆い(折れやすい、割れやすい、欠けやすい)ため複雑な形状に加工しにくいという欠点を持っています。
これらの欠点を改善するためには、WPCの製造(加熱混練)時に、木粉とプラスチックとをよく馴染ませ、均一に混ぜる必要があります。しかし木粉の表面は水にぬれやすい性質(親水性)を持ち、水にぬれにくい性質(疎水性)を持つプラスチックとは、うまく馴染みません。
そこで私たちは、分子内に親水性と疎水性の両方の性質を持ち、界面活性剤としての作用を示すステアリルアルコールという溶媒を使い、図1に示す加溶媒分解法で木粉を改質することで、プラスチックとの馴染みの改善を試みました。

加溶媒分解法による木粉の改質
加溶媒分解法は、木材成分を分解すると同時に溶媒の一部を木材成分に付加させる処理方法です。
ステアリルアルコールを使って加溶媒分解処理したスギ木粉を顕微鏡観察した結果、多くの繊維が切断され微細化されていることが確認できました(図2)。さらに加溶媒分解処理した木粉表面を化学分析した結果、ステアリルアルコール分子の疎水性部分が付加して、木粉表面が疎水化していることが分かりました(図3)。

木粉の加溶媒分解処理がWPCの衝撃強度や伸び性能に及ぼす効果
表面が疎水化された加溶媒分解木粉とプラスチック(ポリプロピレン)を質量比1/1で配合して製造したWPCについて、衝撃試験と引張試験を行い、無処理木粉を同じ質量比で配合して製造したWPCと比較しました。衝撃試験の結果(図4)、加溶媒分解処理木粉を用いた場合には、無処理の木粉を用いた場合の約1.4倍の衝撃強度を示しました。また、引張試験の結果(図5)、加溶媒分解処理木粉を用いた場合には試験体が破壊するまでの変形量(ひずみ)が、無処理の木粉を用いた場合の約4倍となることが分かりました。これは、加溶媒分解処理木粉を用いた場合に伸び性能が向上したことを示しています。以上の結果により、原料の木粉を加溶媒分解処理することにより、従来のWPCの硬くて脆いという欠点を改善し、耐衝撃性能と伸び性能に優れたWPCを製造できることが分かりました。 
現在、混練型WPCの用途は単純な形状のエクステリア資材に限られていますが、本研究で得られた成果により、今後、複雑な形状の家電製品の躯体や建材、自動車部品、日用品などにWPCの用途を拡大できると考えています。

研究資金と課題
本研究は、JSPS 科研費(JP26450243)「木粉の加溶媒分解処理による混練型WPCの物性向上効果の解明」による成果です。
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2017/documents/p32-33.pdf
カテゴリ 加工

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