スギ材合板工場の副産物から生まれた空気浄化剤

タイトル スギ材合板工場の副産物から生まれた空気浄化剤
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 大平 辰朗
松井 直之
吉舎 史晃
発行年度 2017
要約 スギ材等による合板の製造工程では、副産物としてタール状の乾燥廃液が大量に得られます。その廃液を原料に優れた抗酸化力や有害物質浄化能力を持つ「空気浄化剤」を開発しました。
背景・ねらい 建築資材として用いられる合板の原料には、スギ等の針葉樹材が多く用いられています。その製造工程において、タール状の乾燥廃液が大量に排出されますが、現在それらの用途はありません。乾燥廃液の性質を調べたところ、抗菌性、抗酸化性や二酸化窒素等の有害物質の浄化能力が高いことが分かりました。そこで、乾燥廃液中の有効成分を特定し、最適な利用技術を開発することによって、生活環境下で使用できる画期的な空気浄化剤を開発しました。
成果の内容・特徴 合板製造工程で排出する乾燥廃液
建築資材である合板には、昨今の原木事情の変遷により、スギ等の針葉樹材が多く用いられています。製造時には、大根のかつらむきの様に原木をむいて薄い単板にし、乾燥させますが、その工程では強い木材臭を有する乾燥蒸気が発生します(図1)。その臭気を低減するために、乾燥蒸気に対して散水処理を行っていますが、この処理により臭気の元となる木材成分が回収され、タール状の乾燥廃液が大量に得られます(図2)。現在それらは用途がなく、焼却廃棄されています。

乾燥廃液に含まれる化学成分
スギを原木とした時に回収された乾燥廃液を調べたところ、スギ材の樹脂成分であるジテルペン類が67%、香り成分であるセスキテルペン類が29%含まれていました (図3)。特に割合の多い物質はジテルペン類のフェルギノール、サンダラコピマリノールであり、両者で廃液の約50%を占めていました。

乾燥廃液の機能性
乾燥廃液の機能性を調べたところ、大腸菌等に対して強い抗菌性があり、高い抗酸化性も認められました。さらに悪臭・有害物質に対する浄化能力を調べてみると、環境汚染物質の一種である二酸化窒素の浄化能力が極めて強く、その機能は市販されている浄化剤(活性炭)と同等以上であることが分かりました(図4)。活性に関わる物質を調べたところ、抗菌性や抗酸化性については含有割合の多いフェルギノールが、また二酸化窒素浄化能力については、アビエタジエン(図5)等複数の物質が関係していることが明らかになりました。

空気浄化剤の開発
乾燥廃液の特徴を活かした利用法として、有害性が危惧されている二酸化窒素等の環境汚染物質の浄化能力に着目しました。乾燥廃液に含まれる不純物を除去し、最適な利用技術などの開発を行うとともに、フィルムの表面に乾燥廃液を塗った浄化シートの試作・性能評価等を行うことで、生活環境下で使用できる空気浄化剤を開発しました(図6)。乾燥廃液には抗酸化性や環境汚染物質の浄化能力の強い物質が共存しています。そのため、長期間使用した時に生じる有効成分の劣化等を低減する効果も期待できます。

今後の展望
合板工場の副産物として大量に発生している乾燥廃液は、現在のところ用途がなく廃棄されていますが、その利用価値は極めて高いことが分かりました。多機能な有効成分の特性を活かすことで、いろいろな利用法が期待できると考えられます。ここで紹介した空気浄化剤はその一例です。

研究資金と課題
本研究は、JSPS科研費(JP26450242)「スギ材の乾燥廃液を利用した二酸化窒素除去剤の開発」による成果の一部です。
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2017/documents/p36-37.pdf
カテゴリ 香り成分 乾燥 機能性

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