タイトル | 漢方薬の原料「カギカズラ」の国内栽培を目指して- 国産品の薬用成分、増やし方、育て方 - |
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担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
谷口 亨 河村 文郎 大竹 真弓 河下 美都里 橋本 和則 新原 修一 錦織 正智 |
発行年度 | 2017 |
要約 | つる性の樹木であるカギカズラは認知症周辺症状の抑制効果などが期待される漢方薬の原料です。国産カギカズラの栽培に向けて、薬用成分の含有率を明らかにするとともに、苗木の増殖方法や栽培方法を開発しました。 |
背景・ねらい | カギカズラは認知症周辺症状改善等の効果があるとされる漢方薬の原料であり、中国からの輸入量が近年上昇しています。100%輸入に頼っている現状を変えるためには、国内にも自生するカギカズラの栽培技術の開発が必要です。そのために、国産カギカズラの薬用成分を評価し、組織培養やさし木によるクローン苗の作製や栽培の方法を開発しました。この成果は、優良な国産カギカズラの栽培化による漢方薬原料の安定供給と地域社会の活性化に貢献します。 |
成果の内容・特徴 | 漢方薬原料としてのカギカズラ カギカズラは中国南部と日本の房総半島以南から九州に自生するつる性の常緑樹木です。葉の付け根にかぎ状のとげがあり、これを他の植物にひっかけるようにして枝を上に伸ばします。とげを付けた枝の乾燥品はチョウトウコウと呼ばれる生薬で、これを配合した漢方薬には、徘徊などの認知症周辺症状や不眠など精神神経症状の改善に効果があるとされています。しかしながら、現在、国内で使用されているチョウトウコウは全てが中国産です。 国産カギカズラの薬用成分 千葉県から鹿児島県にかけてカギカズラの自生個体を集め、温室で栽培し、とげを付けた枝のアルカロイド含有率を高速液体クロマトグラフィーで分析しました(図 1)。漢方薬の原料とする際の薬用成分の基準は、日本薬局方には総アルカロイド(リンコフィリン及びヒルスチン)0.03%以上を含むと記載されています。調査した個体のほとんどはこの基準を満たしており、国産品は漢方薬の原料として使用可能であることが分かりました。 クローン苗木の増やし方 優れた性質を持つ個体のクローン苗木を作り、増やすためには、組織培養やさし木が適しています。カギカズラのとげを付けた枝を組織培養するとクローン苗木ができることをすでに平成27年度の成果選集で紹介しました。 私たちはさらに、とげが付いていない枝を組織培養すると腋芽の発生割合が高く、よく成長することを新たに見出しました。この手法の方が、組織培養によるクローン 化にはより適しているのです(図2a,b)。また、これまで2年生程度の若い個体のさし木の成功例が報告されていますが、成木でもさし木が可能であり、60%以上の高い発根率の個体もあることを明らかにしました(図2c)。 栽培方法 カギカズラは造林木にまとわりつく厄介者と見なされ、これまで国内で漢方薬原料として栽培する取り組みはありませんでした。私たちは、組織培養で作ったクローン苗を水田跡地に植栽し、栽培する方法を検討しました。植栽翌年には4mを超えて主幹(つる)が生育し、また、伸びた主幹を高さ150cm程度で水平に誘引することにより収量が大きくなることが分かりました(図3)。収穫作業や栽培管理を考慮した結果、収穫後に主幹を150cm程度に切る栽培方法が有効であると考えられました。また、クローン栽培では、栽培年や個体によるアルカロイド含有率のバラツキが小さく、品質の安定性、均一性に優れていることも分かりました。 これらの知見は、国産カギカズラの栽培による漢方薬原料の自給率向上と農山村の活性化に役立ちます。 研究資金と課題 本研究は、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「薬用系機能性樹木の生産効率化手法の開発」(課題番号 26063B)による成果の一部です。 |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2017/documents/p44-45.pdf |
カテゴリ | 乾燥 機能性 クローン苗 栽培技術 水田 |