キレックス法による寄生蜂からの非破壊DNA抽出法

タイトル キレックス法による寄生蜂からの非破壊DNA抽出法
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター
研究期間 2015~2017
研究担当者 三浦一芸
世古智一
安部順一朗
前藤薫
発行年度 2017
要約 寄生蜂個体をキレックス溶液中で24時間以上加温した後、短時間加熱することにより、塩基配列が解読可能なDNAを抽出できる。この処理による個体の触角、翅などの形態的な変化はほとんど認められず、DNA抽出した個体をそのまま乾燥標本として保存できる。
キーワード 寄生蜂、キレックス法、DNA抽出、非破壊、種同定
背景・ねらい 環境保全型農業の推進には、天敵寄生蜂による害虫防除技術の向上が重要な課題となる。天敵寄生蜂は種や系統によって性質が異なる。そのため的確な同定を必要とする。しかし、微小な寄生蜂は形態による同定が難しい。現在DNAバーコードプロジェクトでは解読した塩基配列をGenBankに登録し、簡便な同定を行うシステムを開発している。また、DNAを抽出した標本をそのまま保管すれば、誤同定が起こりにくい。しかし、標本を破壊しないで簡単にDNAを抽出する方法はほとんどない。そこで、寄生蜂を用いてキレックス法を利用した非破壊DNA抽出法を確立する。
成果の内容・特徴
  1. 非破壊でDNAを抽出したい寄生蜂一匹をそのまま5%のChelex® 100レジン(バイオラッド社143-2832)20μlとプロテナーゼK1.4μlの混合溶液中に入れ、少なくとも24時間56°Cに保った後に99.9°Cで3分加熱してDNAを抽出する(図1)。
  2. DNA抽出後の寄生蜂を取り出した後に、溶液をテンプレートとしてPCRおよび塩基配列のダイレクトシーケンスを行うと、キレックス法では他の簡便なDNA抽出法に比べPCRバンドの検出率が高く、塩基配列も良好に解読できる(表1)。
  3. 取り出した寄生蜂は、DNA抽出後でも触角、前翅、頭部および脚の同定に重要な形態もよく保存されており、サンプルの形態的な変化はほとんど観察されない(図2、表2)。
成果の活用面・留意点
  1. 本方法はDNAバーコードによる簡易な種同定に有効であり、各種の小型昆虫に応用できる。
  2. DNA抽出後の昆虫サンプルは、乾燥標本にするためヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理が適切である。
  3. DNAバーコードシステムについては、現在データ集積中であり、実用化には至っていない。
  4. キレックスは粒子状でありため水に沈殿するので個別のチューブに分注する際にはよく攪拌する。また、ピペットのチップによってはキレックス粒子が分注できないこともあるので注意する。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/warc/2017/warc17_s06.html
カテゴリ 病害虫 害虫 乾燥 データ集積 防除

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