タイトル |
穀類粉末に含まれるカビ毒T-2トキシン誘導体の濃度 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 |
研究期間 |
2013~2015 |
研究担当者 |
中川博之
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発行年度 |
2017 |
要約 |
内部精度管理用のカビ毒自然汚染穀類粉末6試料について高速液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析装置(LC-MS/MS)による定量分析を行っている。その結果、T-2トキシンの誘導体(配糖体、アセチル化体)の濃度が非常に低いことが示唆されている。
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キーワード |
トリコテセン系カビ毒、配糖体、LC-MS/MS、モディファイドマイコトキシン
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背景・ねらい |
カビ毒(マイコトキシン)が配糖化やアセチル化等の化学修飾を受けた誘導体(モディファイドマイコトキシン)はそれら自身の毒性は化学修飾により減衰しているものの、生体内で加水分解により元のカビ毒を生成して、毒性を発現する恐れがある。このため、最近では誘導体も含めてカビ毒のリスク評価を行う国際的な動きがある。麦などの汚染が知られるタイプBトリコテセン系カビ毒であるデオキシニバレノール(DON)に関しては、配糖体やアセチル化体の汚染実態の調査がわが国を含め世界各国で行われている。一方、タイプAトリコテセン系カビ毒であるT-2およびHT-2トキシン(T2、HT2)については、農林水産省が2012年から行っている国産麦類の含有実態調査では、それらの誘導体(配糖体やアセチル化体)は調査していない。そこで、T2およびHT2の自然汚染が明らかな穀類粉末(トウモロコシ、小麦、オート麦)の内部精度管理用試料について、高速液体クロマトグラフタンデム型質量分析装置(LC-MS/MS)を用いてこれらの誘導体(図1)の濃度を調べる。
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成果の内容・特徴 |
- T2の誘導体(図1)は市販の標品がないためその含有実態について従来調査していないが、米国農務省(USDA)との国際共同研究契約により独自に入手した標品を使用することでLC-MS/MSによる定量分析を可能にしている(図2)。
- カビ毒組成標準物質として入手可能な、トウモロコシ、小麦、オート麦、の粉末試料(内部精度管理試料)についてLC-MS/MSを用いてT2やその誘導体(図1)の定量分析を行っている(表1)。
- DONに対する配糖体の割合は10%前後からそれ以上であることが報告されている。本成果は、T2における配糖体の存在割合はDONのそれよりもはるかに低いことを示唆するとともに、2014年の欧州食品安全機関(EFSA)が意見書において毒性評価の根拠とした暴露量が過小評価でない(EFSA Journal 2014;12(12):3916,107pp. doi:10.2903/j.efsa.2014.3916)ことを示唆している。
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成果の活用面・留意点 |
- 2011年にEFSAはT2およびHT2の合量について耐容一日摂取量(TDI)100ng/kg体重/日を設定している。2014年にEFSAは暫定的にT2及びHT2の10%が修飾体であると仮定して摂取量を推定した上で、修飾体の毒性は親化合物と同等とみなしてリスク評価を行い、TDIを下回っていると意見書で報告している。
- 暴露評価や継続的なサーベイランス、モニタリングのための定量分析データを引き続き得るためには、各種誘導体の試薬標品が必要である。
- 本成果は主にカビ毒組成標準物質として入手可能なトウモロコシ粉末、小麦粉末、オート麦粉末についてのものであるが、LC-MS/MSを用いた本分析法は他の農作物に含まれるT2やその誘導体の定量分析にも利用可能である。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nfri/2017/nfri17_s18.html
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カテゴリ |
小麦
とうもろこし
モニタリング
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