米粉100%パンが膨らむメカニズムの解明とパン製造法への応用

タイトル 米粉100%パンが膨らむメカニズムの解明とパン製造法への応用
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門
研究期間 2011~2017
研究担当者 矢野裕之
ヴィレヌーヴ真澄美
前田真矢子
竹内知子
小野昌之
発行年度 2017
要約 米粉、水、イースト、砂糖、食塩、油脂だけで作製できる米粉100%パンは、澱粉粒が発酵ガスと水相との界面を安定化させることで生地が膨らむ。柔らかい生地がつぶれないよう、生地の組成および撹拌・発酵・焼成条件を工夫することで簡便に作製できる。
キーワード 米粉100%パン、損傷澱粉、澱粉粒、ホームベーカリー
背景・ねらい 米の需要拡大を目的として、米粉パン製造技術の開発が進められている。市販される「グルテンフリー」パンは、十分な膨らみをもたせるため、増粘剤などの補助材料を使用するものがほとんどであった。そこで本研究では米粉、水、イースト、砂糖、食塩、油脂(バター、菜種油など)だけを原料とする米粉100%パンを開発し、増粘剤・グルテンなしに生地が膨らむメカニズムを明らかにするとともに、その実用化を目指したものである。基本原料だけで低コスト、簡便に作製できる。
成果の内容・特徴
  1. 米粉、水、イースト、砂糖、食塩、油脂だけで作製できる米粉100%パンでは、米の澱粉粒が発酵ガスと水との界面を安定化させることで、発酵生地の気泡を維持していると推定される(図1A)。これは、洗顔フォームなどで界面活性剤が空気と水との界面を安定化させて泡立つメカニズムと似ている(図1B)。
  2. グルテンおよび増粘剤などの補助材料を含まない生地は柔らかく、発酵・焼成の際につぶれやすいが、1)生地を撹拌する際に空気を極力巻き込まないようにする、2)発酵初期に小さな泡が均等に発生するようイーストの添加量を最小限にするとともに、イーストが均一に分散するよう十分に撹拌する、3)発酵過程で気泡の大きさが均一になるよう温度管理を精密に行う、4)発酵が終了した際には不安定な気泡が壊れないうちに高温で焼成し、澱粉を素早く糊化させることで生地を一気に焼き固めるなど、生地の撹拌および発酵・焼成の条件を工夫することで増粘剤なしでパンを作製できる(図2)。
  3. 補助材料なしでも比容積が4 mL/g程度に膨らむことから、一般的な小麦粉パン(比容積が4~5 mL/g)と同等の含泡構造を有すると考えられる。米粉100%パンを家庭で手軽に作ることができ、米の需要拡大への貢献が期待される。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:パン製造業者、ホームベーカリー等のパン製造機器メーカー等
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  3. その他:本研究では市販される米粉のうち、湿式気流粉砕等で製造された損傷澱粉率が低い(<5%)ものが原料に適している。
  4. タイガー魔法瓶株式会社から2017年9月11日に発売された「増粘剤や添加物を使っていない、グルテンフリーの米粉100%食パンがふっくら焼けるIHホームベーカリー」は、同社との共同研究により上記研究成果が実用化されたものである。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/popular/result060/2017/17_054.html
カテゴリ 温度管理 小麦 需要拡大 低コスト

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