森林の放射性セシウムは事故からの5年間で土壌表層に移動した

タイトル 森林の放射性セシウムは事故からの5年間で土壌表層に移動した
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 金子 真司
今村 直広
小松 雅史 
大橋 伸太
橋本 昌司 
梶本 卓也
高野 勉
発行年度 2018
要約 福島県及び茨城県内の汚染程度の異なる9つの森林で樹木と土壌の放射性セシウムの分布を調べたところ、福島原発事故から5年間に樹木の葉・枝から林床に移動し、その多くは表層土壌に蓄積していることが明らかになりました。
背景・ねらい 福島県内の川内、大玉、只見および茨城県内の筑波山のスギ林、ヒノキ林、コナラ林、アカマツ林の9林分に設置した調査地で、2011年8月以降5年間の樹木の葉、枝、樹皮、幹材、落葉層、鉱質土壌の放射性セシウムの濃度と蓄積量の変化を調べました。その結果、針葉樹の葉や樹木の枝の放射性セシウム濃度は時間の経過とともに急激に低下し、それにともない樹木における放射性セシウムの蓄積量が大きく低下しました。これに対して、落葉層と鉱質土壌では放射性セシウムの蓄積量はむしろ増加し、3年後の2014年以降は森林全体の放射性セシウムの90%以上が落葉層と鉱質土壌にあり、その多くが鉱質土壌の表層0?5㎝に存在していました。
成果の内容・特徴 森林内の放射性セシウム動態調査
 東京電力福島第1原子力発電所の事故(以下、原発事故)によって森林域に降下した放射性セシウムは、森林整備の停滞や特用林産物の出荷制限、さらには林業従事者の被ばくリスク上昇など様々な問題を引き起こしました。これらの問題に対応するためには、森林内における放射性セシウムの分布状況を把握するとともに、経年的にどのように変化していくかを把握する必要があります。
 そこで、2011年8月に、福島県内の川内、大玉、只見および茨城県内の筑波山のスギ林、ヒノキ林、コナラ林、アカマツ林の9林分に調査地(図1)を設けて、樹木の葉、枝、樹皮、幹材、それと落葉層や鉱質土壌に存在する放射性セシウムの濃度と蓄積量の変化を調べました(図2)。
5年間で放射性セシウムは樹木の葉・枝から土壌表層に移動
 針葉樹の葉や樹木の枝の放射性セシウム濃度は、時間の経過とともに急激に低下したことがわかりました。幹材の放射性セシウム濃度は、アカマツで低下、スギやコナラでは増加する傾向がみられましたが、樹木の他の部位に比べて低濃度でした。時間の経過とともに、森林内の放射性セシウムの蓄積量は、樹木においては急激に低下しましたが、その一方で、落葉層と鉱質土壌の放射性セシウムの蓄積量は増加しました。3年後の2014年以降は森林全体の放射性セシウムの90%以上が落葉層と鉱質土壌に存在し、その大半は鉱質土壌の表層0?5cmに存在していました(図3)。このように、原発事故で森林にもたらされた放射性セシウムは時間の経過とともに樹木から土壌へ移動し、その多くは土壌の表層付近にとどまっていることを明らかにしました。
放射能汚染地域の林業再開のための基盤データを提供
 原発事故直後から数年間にわたり森林内の放射性セシウムの動態を網羅的かつ長期的に調査したデータは、チェルノブイリ原発事故においても得られていませんでした。本研究では、2011年の原発事故直後から5年間の間に森林内で放射性セシウムが移動した過程を明らかにできました。得られた知見は、今後の被災地の森林管理に利用できます。とくに、森林内の放射性セシウムの移動を予測するモデルの開発や特用林産物の出荷制限解除時期の推定、林業従事者や森林利用者の被ばく低減を考えるうえで重要な成果です。また、放射性セシウムの中でもセシウム137の半減期は30年と長いため、今後も引き続き森林内における放射性セシウムの観測を続けていくことが重要です。
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p10-11.pdf
カテゴリ 出荷調整

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