未利用の「竹」を効果的に利用する方法

タイトル 未利用の「竹」を効果的に利用する方法
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 大平 辰朗
松井 直之
橋田 光
池田 努
下川 知子
金子 俊彦
田中 雄一
小澤 洋平
福家 正志
高石 佳樹
笠岡 英司
発行年度 2018
要約 放置竹林として問題になっている「竹」は、適切な管理を行うためにも大量消費につながる効果的な利用法が重要です。そこで環境に優しい技術を利用し、竹から高付加価値素材を製造する方法を開発しました。
背景・ねらい 放置竹林の増加や、里山林への竹の侵入等が問題となっています。竹林の適切な管理を進めるためには、付加価値の高い効果的な竹の利用法の開発が必要です。そこで省エネルギー効果が高いマイクロ波を用いて、竹から優れた機能性を有する抽出液とその抽出残渣を効率的に製造する方法を開発しました。竹由来の抽出液は、抗菌・抗ウイルス活性,リラックス効果, 抗炎症作用が優れており、各種消毒剤やヘルスケア素材として活用可能です。一方、抽出残渣は優れた消臭剤として活用でき、さらに残渣から製造したセルロースナノファイバーをボードの製造に利用したところ、曲げ強度が数十パーセント向上することがわかりました。
成果の内容・特徴 なぜ竹の効果的な用途開発が必要なのか
 竹は、西日本の里山地域を中心に広く分布しています。しかしながら放置竹林の増加や里山林への竹の侵入等が問題となっており(図1)、この適切な管理を行うためには、付加価値の高い効果的な竹の利用法の開発が課題となっています。
竹の利用量は限定的
 竹は古来より日本人に親しまれてきた素材の一つであり、変形しにくく弾力性が強い一方で、裂けやすいという物理的な特性を有するため、器具類、家具類、水筒、自動車用ハンドル等として利用されてきました。また竹の皮は食品などの包装用としても利用されています。一方で、竹の葉や稈に含まれる成分が薬の一部として利用されることもあります。例えば、ハチクの皮は竹?(チクジョ)と呼ばれ、漢方薬の原料となっています。また、モウソウチクの稈部から発見された強い抗菌性物質は薬剤として製品化されています。しかし、これらに利用されている竹の量は限られています。
効率的な処理技術の開発 -無駄のない総合利用を目指して-
 竹資源を無駄なく総合的に利用するために、民間企業と共同で開発した「減圧式マイクロ波抽出装置」(図2)を活用しました。マイクロ波は加熱の効率が高く、省エネルギー効果が高い環境に優しい技術です。この装置は、減圧状態で竹に含まれる水分をマイクロ波で瞬時に蒸気にして有効成分を抽出するため、速やかな抽出ができ、大量処理が可能です。また低温(60℃前後)状態での抽出も可能であるため、変質の少ない優れた品質の抽出液が得られます。さらに、竹を素材として利用する時には含有する水分が障害となりますが、本法の抽出残渣は含水率が低い状態で得られます。そのため抽出残渣が容易に利用できますので、結果的に竹を抽出液と抽出残渣の両方で無駄なく総合的に利用することが可能となります(図3)。
抽出液の用途

 得られた抽出液は、日常生活で問題になる有害菌等に対する優れた抗菌効果が認められるほか、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果も優れていますので、各種消毒剤の原料として利用できます。また、ラットを用いた動物実験により、抽出液の香りにはリラックス効果が高いことがわかりました(図4)。さらに、抽出液は抗炎症作用が高いことも判明しており、ヘルスケア商品の原料として利活用が期待できます。
抽出残渣の用途
 大量に排出される抽出残渣は、パーティクルボードの原料としての適性が認められました。また、アンモニアに対する消臭活性が高いため、その機能を活かした消臭剤を開発できました。さらに、抽出残渣からセルロースナノファイバーを製造し、それらをパーティクルボードに添加することで、ボードの曲げ強度を数十パーセント向上できました(図5)。この成果を発展させれば、将来的には軽量で強度に優れた建築資材の製造が可能になります。
 以上で示した方法により、これまで限定的な利用に留まっていた竹が高い付加価値の製品として様々な分野で多面的に利用できます。そのため、放置竹林の解消など、竹林の適切な管理を推進できるほか、竹を活用した地場産業の活性化にも貢献できます。
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p36-37.pdf
カテゴリ 機能性 高付加価値 省エネ・低コスト化 薬剤

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