日本のムギ類に感染するPolymyxa graminisの系統と感染ウイルス種

タイトル 日本のムギ類に感染するPolymyxa graminisの系統と感染ウイルス種
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2011~2017
研究担当者 大木健広
笹谷孝英
佐山充
眞岡哲夫
発行年度 2017
要約 日本のコムギとオオムギの根に感染しているPolymyxa graminisのrDNA-ITS配列は、Ia、Ib、IIa系統(リボタイプ)に類別される。日本のコムギからは主にリボタイプIbのP. graminisが検出されるが、感染しているウイルス種との関連は認められない。
キーワード リボタイプ、コムギ縞萎縮ウイルス、コムギ萎縮ウイルス、フロウイルス属
背景・ねらい 北海道畑輪作の基幹作物であるコムギにおいて、コムギ縞萎縮ウイルス、コムギ萎縮ウイルスが発生し、安定生産の阻害要因となっている。特に主力品種である「きたほなみ」は、これらのウイルスに感受性であり、激しく発病した場合は、成熟期がばらつき収穫に支障をきたすとともに、収量が3割程度減少する。ムギ類の菌媒介性ウイルスは、土壌中のネコブカビ類Polymyxa graminisにより媒介され、防除が困難なため、抵抗性品種の利用が唯一の対策である。現在、「ゆめちから」等のウイルスに対する抵抗性品種が育成されているが、今後抵抗性打破系統の出現も危惧されるため、媒介菌の感染を抑える抵抗性素材の探索が必要である。
P. graminisは、海外では、リボソーマルDNA-ITS配列により6種類の系統(リボタイプI~VI)に類別され、菌のリボタイプと媒介ウイルス種に関連がみられるとの報告があるが、わが国のP. graminisについては、詳細な解析が行われていない。そこで、各地から採集したコムギとオオムギの根に感染するP. graminisのリボタイプと、感染しているウイルス種との関係を調べ、日本におけるP. graminisの発生生態を明らかにし、北海道のコムギ安定生産を可能とする媒介菌抵抗性コムギ品種開発の基礎知見を得る。
成果の内容・特徴
  1. 各地から採集したコムギ根ならびにオオムギ根からゲノムDNAを抽出し、NS7/ITS4プライマー(White et al. 1990)を用いてPCRを行うと、データベース上の既知のP. graminis のITS配列と高い相同性を示す5種類の配列が得られる(PgJ-1~5)。
  2. ITS配列に基づき分子系統樹を作成すると、PgJ-1はリボタイプIa、PgJ-2~4はIb、PgJ-5はIIaの既知配列とクレードを形成する(図1)。海外では、主としてIとIIのP. graminisがコムギやオオムギに感染すると報告されており、日本のP. graminisのリボタイプも、それと一致する。
  3. 海外の配列と比較すると、PgJ-1とPgJ-5はそれぞれ既知のIa、IIaの配列とほぼ一致する。一方、PgJ-2~4はITS2配列の長さが異なり、海外で報告されているIbの配列と違いがみられる(表1)。
  4. 5種類のITS配列に特異的なプライマーを作製し、日本のコムギやオオムギに感染しているP. graminisのリボタイプを調べると、日本ではIbのP. graminisが多く検出される(表2)。IbとIIaはコムギとオオムギ両方で検出されるが、Iaはオオムギのみで検出される。また、北海道のコムギにおいても、IbとIIaが検出される。
  5. 検出されるP. graminisのリボタイプと感染ウイルス種に関連はみられない。海外では、リボタイプIIのP. graminsがコムギ萎縮ウイルスを含むフロウイルス属ウイルスを媒介する可能性が指摘されているが、そのような関連は認められない。
成果の活用面・留意点
  1. 媒介菌のリボタイプと媒介ウイルス種の詳細な調査や、P. graminisが感染しない、または感染の少ない品種を探索するための基礎的知見として利用できる。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/harc/2017/harc17_s02.html
カテゴリ 病害虫 大麦 データベース 抵抗性 抵抗性品種 品種 品種開発 防除 輪作

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