セリンはカンピロバクターの栄養源として最も重要なアミノ酸である

タイトル セリンはカンピロバクターの栄養源として最も重要なアミノ酸である
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
研究期間 2016~2017
研究担当者 渡部綾子
岩田剛敏
玉村雪乃
楠本正博
秋庭正人
発行年度 2018
要約 セリンを主要な栄養源とする条件下で培養したカンピロバクターの網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、鞭毛合成遺伝子の発現低下、セリンを基質とするアミノ酸合成遺伝子の発現上昇など、本菌がこの環境に適応してよく増殖することがわかる。
キーワード 鶏、カンピロバクター・ジェジュニ、トランスクリプトーム解析、セリン
背景・ねらい カンピロバクターはわが国を含む多くの先進国で最も重要な食中毒起因菌の一つである。本菌は6-ホスホフルクトキナーゼを欠くことからグルコースを利用できない。そのため、アミノ酸が炭素源として重要である。本菌は増殖の際、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびプロリンを大量に消費することが報告されている。特にセリンに対しては強い正の走化性を示すことが知られており、セリンは本菌にとって最も重要なアミノ酸と考えられている。そこで本研究では、カンピロバクターの増殖におけるセリンの重要性を確認するとともに、セリンを主要な栄養源とする条件下でのカンピロバクターの遺伝子発現挙動を明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 本菌は栄養を制限したMEM培地にセリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびプロリンを添加することでよく増殖するが、この培地からセリンを除去すると増殖が有意に低下する(図1)。また、MEM培地のみではわずかな増殖しか認められないが、セリンを添加することで増殖は有意に上昇する(図2)。
  2. MEM培地を用い、セリン添加・無添加条件下で8時間培養したカンピロバクター・ジェジュニNCTC 11168株から全RNAを抽出することで、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を実施できる。
  3. セリン添加により発現の変化した遺伝子をその機能により分類すると、機能未知の遺伝子が26.8%を占める一方、発現が変化した遺伝子の9.5%がアミノ酸の代謝、8.9%が細胞壁・細胞膜・外被の合成、7.7%がエネルギーの産生、6.7%がタンパク質の合成にそれぞれ関わる遺伝子である(図3)。
  4. セリン添加により、セリンを基質とするグリシン、ロイシン、ヒスチジン、プロリン、トレオニン、トリプトファンの合成に関与する遺伝子の発現が上昇する。つまり、セリンを基質とした複数のアミノ酸合成経路が活性化し、本菌の活発な増殖を支えている(図4)。
  5. セリンの添加により、本菌の血清抵抗性に関与する莢膜の合成関連遺伝子の発現が上昇する(図4)。
  6. カンピロバクターはセリンに正の走化性を示す。セリンが豊富に存在する環境下では本菌は移動する必要がないため、本菌の運動装置である鞭毛の合成に関与する遺伝子の発現は低下する(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究で得られた遺伝子の網羅的発現解析の結果は、カンピロバクターのセリン感知装置やセリン取り込み経路の探索に活用でき、ひいては本菌の制御技術開発のための新しい標的を提示できる可能性がある。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/niah/2018/niah18_s21.html
カテゴリ シカ 抵抗性

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