タイトル |
ヨーロッパからベトナムへ越境性伝播した豚インフルエンザウイルス |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 |
研究期間 |
2015~2018 |
研究担当者 |
竹前喜洋
内田裕子
西藤岳彦
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発行年度 |
2018 |
要約 |
2016年12月にベトナム南部で発見された豚インフルエンザウイルス(IAV-S)は、ヨーロッパで流行している鳥型H1N2亜型IAV-Sに由来する。国際的な豚の移動に伴って移動するウイルスは、新しい遺伝型のウイルスの出現に関与している。
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キーワード |
豚、インフルエンザウイルス、越境性伝播、ヨーロッパ、ベトナム
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背景・ねらい |
豚で流行するA型インフルエンザウイルスには、主に三つの亜型(H1N1、H1N2、H3N2亜型)が認められるが、同じ亜型でもその遺伝的な起源は地域や国ごとに異なっている。ヨーロッパにおいては、1970年代後期に野鳥から豚に種間伝播した鳥型H1亜型豚インフルエンザウイルス(IAV-S)が流行している。豚の国際的な輸出入は、IAV-Sの移動や遺伝子再集合と密接に関連しており、これまでにも鳥型H1N1亜型IAV-Sがヨーロッパから中国やタイに伝播していたことが報告されている。本研究では、2016年12月にベトナム南部Ba Ria Vung Tau省の養豚場で発見されたH1N2亜型IAV-Sの由来を明らかにすることを目的としている。
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成果の内容・特徴 |
- 2016年12月にベトナム南部Ba Ria Vung Tau省の養豚場から分離されたIAV-S(ベトナム2016年分離株)のHA遺伝子は、ヨーロッパの豚で1970年後期以降に流行している鳥型H1亜型IAV-Sに由来している(図1)。
- ベトナム2016年分離株のNA遺伝子はヨーロッパの豚で1980年代以降に流行している人型H3N2亜型IAV-Sに由来している(図1)。
- ベトナム2016年分離株のHA遺伝子とNA遺伝子の相同性検索の結果、ドイツとオランダでそれぞれ2010年と2012年に分離されたH1N2亜型IAV-Sと96%以上の相同性を示す。これまでにこれらの遺伝子を持つIAV-Sがヨーロッパ以外で報告された例はない。
- ベトナム2016年分離株の内部遺伝子は全て季節性ヒトインフルエンザウイルス(A(H1N1)pdm09)に由来している(図1)。
- ベトナム2016年分離株と公共データベース上のウイルス株の分離場所情報と塩基配列情報を用いた解析から、ベトナム2016年分離株の祖先株は、ヨーロッパからベトナムに侵入したと推定される(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、共同研究機関であるベトナム農務省動物衛生局及び地方家畜衛生局に報告し、ベトナム国内における養豚場のインフルエンザ対策の参考データとして活用される。
- ベトナムに2010-2015年の間に輸入された生豚(2,149トン)の約25%はヨーロッパ由来であり(http://www.intracen.org/)、当該ウイルスの分離農場はヨーロッパから豚を輸入している種豚生産農場から2年ごとに50頭の種豚を導入している。これらのことから、新たなIAV-Sの侵入を防ぐには、国際的な豚の移動に伴う国レベルの検疫と豚の導入時の農場レベルでの検疫の両方が肝要である。
- ベトナムにおいては、過去に北米由来のIAV-Sが複数回侵入していたことを明らかにしている。一方で、動物検疫所で輸入豚に対するIAV-S検査が実施されている日本の農場においては、海外に由来するIAV-Sは近年報告されていないことも、国レベルの検疫の重要性を示唆している。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/niah/2018/niah18_s13.html
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カテゴリ |
飼育技術
データベース
豚
輸出
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