地域ぐるみ獣害対策を実現するための集落間・住民間の合意成立条件

タイトル 地域ぐるみ獣害対策を実現するための集落間・住民間の合意成立条件
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門
研究期間 2016~2018
研究担当者 重岡徹
嶺田拓也
発行年度 2018
要約 地域ぐるみ獣害対策を推進するためには、まず農業農村振興事業等の施策枠組みに対策を位置づけ、次に構想・計画協議の中で対策案を検討し、さらに土地利用図や構想・計画項目に対策を明記することで集落間・住民間の対策参加への合意が円滑になる。
キーワード 大規模防護柵、地域ぐるみ、合意形成、農業農村振興
背景・ねらい 地域ぐるみで取り組むことが重要とされる大規模防護柵の設置では、地域内(の農地)に鳥獣の侵入を遮断するために、地域全体を隙間なく柵で囲うことが必要となるが、そのためには関係集落および住民の理解と参加が必要である。そこで、ニホンザルによる水稲作被害が深刻な新潟県新発田市の水稲単作地域の25集落からなる「KH地区鳥獣害防止対策協議会」と、その構成集落の一つである「KS集落」の猿害対策の取り組み過程から、地域ぐるみ鳥獣害対策に対する集落間および住民間の合意形成実態を観察し、農業農村整備事業の実施が見込まれる場合の一つの成立条件を提案する。
成果の内容・特徴
  1. 地域ぐるみ大規模防護柵は、複数集落を囲い込む侵入防止策で、地域全体を隙間なく囲うことが防止効果を担保する。隣り合う集落が連携して鳥獣の侵入を防ぐためには広域にわたる延長の広域柵を設置するとともに、下草刈り・補修などの管理作業を密に行う必要がある。
  2. 水田1900ha、25集落のKH地区は獣害被害面積及び被害集落数は1割未満であるにもかかわらず、25集落で獣害対策協議会を設置し21.4kmの集落横断型電気柵を全集落の無償労働で設置するとともに、草刈り等の維持管理作業は柵が設置された8集落の住民参加で行うなど広域の地域ぐるみ対策を実施している(図1)。
  3. 25集落の連携による柵の設置・運営を可能にしたのは、先行して取り組まれた広域自治連絡協議会主導の農地基盤整備事業推進のための集落間連携協議の実績である。協議の中で獣害が地域農業振興上の課題であるとの認識を被害集落(8集落)だけでなく事業に参加する25集落で共有することになり、集落横断型電気柵の運営を農業振興対策の一環に加えて広域での地域ぐるみ対策を実現している(表1)。
  4. 柵の下草狩りや補修作業などの防護柵維持管理作業への継続的な住民参加を実現するためには、管理作業を自治活動などの一般的な出役作業として位置づけるだけでなく、多面的機能支払交付金活動などの農業振興活動に組み込むことで継続的な住民参加が見込まれる(表2)。
  5. 鳥獣害対策を地域ぐるみで取り組むための集落間・住民間の合意形成を成立するためには、合意基盤として農業農村振興施策の中に対策を位置づけて、合意を図る運動として施策目標や計画検討協議の中で対策を検討し、合意を担保する仕掛けとして土地利用計画や地域活性化構想等に対策内容を明記することが有効となる(表3)。
成果の活用面・留意点
  1. 複数の集落にわたる地域ぐるみの大規模防護柵の設置や追い払い活動等を実施する場合の参考情報として活用できる。
  2. 本成果の合意の成立条件は水稲単作地帯の1事例の観察から導き出したものであるので、他地区で用いる場合は、それぞれの農業農村整備事業の動向や地域立地、農業や地域社会の実態(日当・労賃水準など)を踏まえた施策展開を図る必要がある。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nire/2018/nire18_s15.html
カテゴリ 水田 水稲 鳥獣害 防護柵

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