タイトル |
たった1個の栽培果実も廃果も外来種を含む哺乳類の効率的なエネルギー獲得源になる |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター |
研究期間 |
2016~2018 |
研究担当者 |
小坂井千夏
秦彩夏
佐伯緑
竹内正彦
上田弘則
江口祐輔
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発行年度 |
2018 |
要約 |
ハクビシンは1日に必要なエネルギー量の22%に相当する柿1個を最短1分で食べ、イチゴ廃果場の1回の訪問だけで1日分のエネルギーを獲得することがある。アライグマも1回の廃果場の訪問で1日分の1/4のエネルギーを獲得できる。栽培果実や廃果はこれら哺乳類の格好の餌となる。
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キーワード |
廃果、イチゴ、柿、鳥獣害対策、外来種、アライグマ、ハクビシン
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背景・ねらい |
鳥獣害対策において、動物に安易に農作物を利用させることは、その農作物が出荷されるか否かを問わず「餌付け」となる。農作物に餌付いた動物の栄養状態は良くなり、個体数や分布、ひいては農作物被害を増大させるおそれがあるが、どの程度良い餌となっているのか具体的には分かってない。果樹や果実的野菜の生産では、規格外等の理由から廃棄される果実(以下、廃果)が農地周辺に大量に放置されることも多く、廃果対策が進んでいない現状もある。そこで、果樹・果実的野菜の収穫量第1位であるイチゴ、庭木としても多く植えられている柿を対象として、栽培果実及び廃果が哺乳類の餌としてどのような価値を持つか、エネルギー獲得効率の観点から具体的に明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 外来種ハクビシンの飼育個体に柿果実を与えて食べる速さを計測すると、最も速く食べる個体は約1分、最も遅く食べる個体でも約6分で1個の果実を食べきる。この時のエネルギー獲得量は1日の必要エネルギー量の16~22%に相当する(表1)。
- イチゴ園の廃果場(茨城県県南地域)に自動撮影カメラを設置する調査から、特定外来生物アライグマ、外来種ハクビシン、在来種ではアナグマ、タヌキ、ノウサギによるイチゴ廃果の採食を確認した(図1)。動画解析によって単位時間当たりに食べる廃果数を計測すると、1分間当たりの中央値で、最多はハクビシンの6.0個、最少はアライグマの3.8個となる(図2、表2)。
- 廃果場における滞在時間の中央値は、ハクビシンでは3分、アライグマでは9分であり、1回の滞在で1日の必要量の1/4(25~26%)を獲得できる(表2)。最も長く滞在したハクビシンの場合(14分)には、たった1回の訪問で1日に必要なエネルギー量を全て(110%)獲得できる(表2)。在来種の1回の滞在時間の中央値はアライグマより短く2分で、この時に獲得できるエネルギー量は1日の必要量の6~7%であるが、最も長く滞在した場合(5分)には1日の必要量の18~23%を獲得できる(表2)。
- 上記と同じ速さで食べ続けた場合に1日の必要エネルギー量の獲得にかかる時間は、柿では4~39分(表1)、イチゴ廃果場では13~35分(表2)となる。一方、外来種アライグマとハクビシンは、原産地の森林において1日の約半分(12時間)をかけて餌を探し回る。人間が大きく品種改良した栽培果実や、探し回らずに一か所で大量の果実を食べられる廃果場を利用する個体は、原産地の個体のわずか0.6~5.3%の短い時間で必要量を獲得できる計算となる。
- 以上の結果は、たった1個の栽培果実でも、たとえ捨てられる廃果であっても、外来種を含む中型サイズの哺乳類にとってエネルギー獲得効率の高い餌となることの科学的な裏付けとなる。
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成果の活用面・留意点 |
- 鳥獣害の現場において、生産者が現状の課題に気付くための資料として活用できる。
- 本研究ではエネルギー量以外の栄養素の獲得効率等は考慮していない。また、イチゴ及び柿以外の栽培果実とその廃果では、エネルギー獲得効率が本研究と異なる可能性がある。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/carc/2018/carc18_s12.html
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カテゴリ |
いちご
出荷調整
鳥獣害
品種改良
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