HSMAC法の概念を適用した剛性モデルによるパイプラインの水理解析手法

タイトル HSMAC法の概念を適用した剛性モデルによるパイプラインの水理解析手法
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門
研究期間 2018~2018
研究担当者 浪平篤
髙木強治
発行年度 2018
要約 本手法は、パイプラインシステムにおけるサージング等の緩やかな非定常現象を対象とした水理解析手法である。既存方法で不可欠である従属変数の消去や基礎式の再構成といった煩雑な前処理を行わずに、全ての変数を同時に解くことが可能である。
キーワード パイプライン、サージング、水理設計、剛性モデル、HSMAC法
背景・ねらい 水槽を含むパイプラインシステムでは、サージングと呼ばれる水槽の水面の上下変動が繰り返される現象等、種々の非定常現象が発生することがある。このような場合、農業用水の安定した送配水に支障が生じるため、設計の段階で剛性モデルによる水理解析を行って発生の予測と対策の検討が行われる。しかしながら既存の剛性モデルの解析手法では、従属変数の消去や基礎式の再構成といった煩雑な前処理が必要不可欠である。そこで、前処理を行わずに全ての変数を同時に解くことが可能な解析手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. HSMAC法(Highly Simplified Marker and Cell method)とは、非圧縮性流れに対する数値解析手法の一つであり、変数のうち圧力の時間発展を記述する基礎式が存在しないものの、運動方程式における圧力項と連続式のみを陰的に、他を陽的に計算することで、全ての変数を同時に解くものである。この概念を適用し、剛性モデルの基礎式(図1)のうち管路の運動方程式における圧力項および分岐点の連続式のみを陰的に、他を陽的に計算する。これにより、時間発展を記述する基礎式が存在しない分岐点の圧力水頭の消去、分岐点と接続する管路の流速のうち従属変数とみなせる流速の消去、基礎式の再構成といった既存の方法では必要不可欠である煩雑な前処理を行わず、管路の流速と節点の圧力水頭を同時に解くことが可能となる。
  2. 上記1の剛性モデルの解析手法を、水槽を含むパイプラインシステム(図2)に適用する。比較のため、既存の解析手法のうち最も確立されているもの(以下、既存の方法)を用いた解析も実施する。
  3. ポンプ注水地点および水槽における圧力水頭の経時変化(図3)、これらの節点と接続する管路の流量変化(図3)より、取水量の変化に伴う各水槽における圧力水頭の増減の影響を受けてポンプ注水地点の圧力水頭が変化している状況や、ともに水槽に接続するものの管路5と管路9では流量の変動が一桁程度異なっている状況等、二つの解析結果でほぼ一致している。相対誤差は、いずれの節点および管路でも1.0×10-2%未満であり、解析の精度に実用上の問題はないといえる。
  4. データの入出力や前処理を除いた計算のみに要した時間は、Intel(R) Core(TM) i7-5960X CPU 3.00GHzのPCを用いると、既往の方法では0.484 s、本手法では0.265 sを要することから、計算の効率に関しては本研究の方法に利点がある。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果の活用者は、土地改良事業においてパイプラインの実務的な水理設計に携わる農林水産省や都道府県の技術系職員や民間の設計会社職員等の農業土木技術者である。
  2. 実務的な水理設計に普及させるためのプログラムの汎用化は今後の課題である。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nire/2018/nire18_s02.html
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