タイトル |
熊本地震によりトマト施設で発生した噴砂の理化学性と噴砂すき込みが農地へ及ぼした影響 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2016~2016 |
研究担当者 |
古賀伸久
身次幸二郎
冨永純司
三原順一
椙山幹司
中野恵子
草場敬
新美洋
井原啓貴
山口典子
山根剛
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発行年度 |
2018 |
要約 |
平成28年熊本地震において液状化によりトマト施設で発生した噴砂は、周りの作土と比べ、陽イオン交換容量が小さく、電気伝導度や塩素イオン濃度がやや高かった。営農再開直前の作土の理化学性や土壌透水性は、ほ場内の液状化が発生した部分としなかった部分で大きな差はなかった。
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キーワード |
平成28年熊本地震、干拓地、液状化、噴砂、施設トマト
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背景・ねらい |
平成28年4月に発生した熊本地震では、地震を引きおこした断層付近を中心に熊本県内の広い範囲で液状化が発生した。トマト等施設野菜の大産地である熊本県沿海の干拓地地域においても液状化が発生し、生育中であったトマトに生育停滞や収量低下等の被害をもたらした。被災地域では、8月下旬から10月頃にかけて次作トマトの苗定植作業(翌年の6月頃まで収穫)が予定される一方、液状化による作土中の塩類蓄積や土壌保水性の変化が懸念されていたことから、営農再開後の栽培管理において参考となる情報を生産者に提供することを目的として、噴砂の化学的性質や、噴砂のすき込みが作土の理化学性に及ぼした影響を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 熊本県沿海の干拓地では、熊本地震により一部の栽培施設に液状化が発生し(写真1)、地震発生時に生育中だったトマトの茎が細くなる、果実が太らないなどの被害が報告された。
- 平成28年6月に採取した噴砂について、pHはA~Cの3ほ場でアルカリ性(pH7.1~7.7)を示すのに対し、Dほ場では酸性を示した(表1)。噴砂の電気伝導度(EC)は、噴砂を含まない周囲の作土のそれと同等かやや高い傾向があった。噴砂のpHやECが高かったB、Cほ場では、塩素イオン濃度も高かった。噴砂の陽イオン交換容量(CEC)は作土のそれよりも小さかった。
- 噴砂すき込み後に採取された作土(7月下旬から8月上旬に採取)について、もともとpHが低いほ場や、ECや塩素イオン濃度が高いほ場があったが、各ほ場内に1箇所ずつ設けた液状化区と液状化の発生が確認されなかった対照区の間にpH、EC、塩素イオン濃度に大きな差はなかった(表2)。無機態窒素濃度、有効態リン酸濃度、交換性陽イオン濃度、CECについても、対照区と液状化区の間に大きな差は見られなかった。
- 土壌透水性(シリンダー法により求めた定常浸入速度)は、Bほ場において液状化区で小さくなったが、その他のほ場では対照区と液状化区の間に差は見られなかった(図1)。
- 調査を実施した4ほ場では、平成28年8月中旬以降、地震発生後最初の作付けとなるトマトやミニトマトの定植が行われ、定植2週間後からその年の12月まで対照区と液状化区における生育調査が定期的に実施され、収量に直接影響する開花果房数や着果(花)数は、いずれのほ場、時期においても有意な差がなかった(データ掲載なし)。
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成果の活用面・留意点 |
- 液状化に伴って発生する噴砂の量と質は、地震の規模や発生場所によって異なる。本調査結果は、写真1に示される量や表1に示される化学的性質を有する噴砂が発生した平成28年熊本地震での結果である。
- 調査対象地域での施設栽培では、連作障害を回避するため、湛水した土壌の上にシートを被せ、太陽熱で温度を高めて土壌を消毒する作業が定植前に一般的に行われる。すべての調査ほ場では、このような土壌消毒作業が作土採取前に実施されており、水の地下浸透を通して塩類が作土から除去された可能性がある。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/karc/2018/karc18_s18.html
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カテゴリ |
肥料
栽培技術
施設栽培
土壌消毒
トマト
ミニトマト
連作障害
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