タイトル |
べと病菌感染時に発現が誘導される「シャインマスカット」の防御応答関連遺伝子 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門 |
研究期間 |
2017~2019 |
研究担当者 |
清水健雄
河野淳
須﨑浩一
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発行年度 |
2018 |
要約 |
中程度のべと病抵抗性を示すブドウ「シャインマスカット」において、5種類の防御応答関連遺伝子の存在が明らかとなり、その中の一つであるPR-2 はべと病菌の感染時に発現誘導される。
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キーワード |
「シャインマスカット」、べと病、抵抗性、防御応答関連遺伝子、発現解析
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背景・ねらい |
ブドウべと病は国内外のブドウ生産に大きな被害をもたらしている重要病害である。近年注目を集めている良食味品種のブドウである「シャインマスカット」は、比較的べと病抵抗性が強いことでも知られており、そのべと病抵抗性機構に関連する情報は、今後のべと病抵抗性品種の育成に活用できると考えられる。そこで、本研究では、「シャインマスカット」におけるべと病抵抗性機構の解明のため、べと病菌感染時に発現変動する防御応答関連遺伝子を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 「シャインマスカット」、「シャインマスカット」よりもべと病抵抗性が強いと考えられるブドウ「コーベル5BB」、べと病抵抗性が弱いと考えられるブドウ「カッタクルガン」において、各ブドウの葉の裏に対してべと病菌の胞子のう懸濁液(1.0x104/ml)を接種し、7日後の症状を観察すると図1Aのようになる。「コーベル5BB」では胞子のうは見られないが、「シャインマスカット」では、「カッタクルガン」のような大量の胞子のうは見られず、毛じ(図1Aの「シャインマスカット」で見られる白い毛のような構造物)の隙間や上部に少量の胞子のうが観察される。また、各品種において胞子のう形成部位の面積を調べると図1Bのようになり、「シャインマスカット」や「コーベル5BB」は、「カッタクルガン」よりも胞子のう形成部位の面積が極めて小さく、両品種はべと病抵抗性機構を有している可能性がある。
- 表1に示した遺伝子において、Actや既知の防御応答関連遺伝子であるCHI、GLP-2、NAC、OSM-1、PR-2は、「シャインマスカット」、「コーベル5BB」、「カッタクルガン」におけるRT-PCRを利用したクローニングにより、その存在および発現を確認することができる。
- 上記で確認できた既知の防御応答関連遺伝子において、Real-time PCRによりべと病菌の感染時における発現変動を調べると図2のような結果になる。「シャインマスカット」ではPR-2、「コーベル5BB」ではCHI、OSM-1、PR-2の発現量がべと病菌感染時に上昇する。一方、「カッタクルガン」では、今回調査した防御応答関連遺伝子の発現誘導は見られない。
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成果の活用面・留意点 |
- ブドウのべと病抵抗性機構のさらなる研究により、べと病抵抗性機構に関与する遺伝子の情報が蓄積されれば、今後のべと病抵抗性ブドウ品種のスマート育種に活用できる。
- 「シャインマスカット」と「コーベル5BB」では、べと病菌感染時の防御応答関連遺伝子の発現パターンが異なることから、それぞれ異なるべと病抵抗性機構を有しているかもしれない。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2018/nifts18_s14.html
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カテゴリ |
育種
抵抗性
抵抗性品種
品種
ぶどう
良食味
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